国民経済の実質所得は,生産技術と資本ストックの量を与えられれば,すべての労働者を完全に雇用して産出できる財の実質価値(完全雇用産出高)を超えて増加することはできない,と考えられる。もし総需要がこの完全雇用産出高を超過していれば,財の価格は当然,上昇せざるをえないのでインフレーションが起こる。こうした観点から,総需要の完全雇用産出高に対する超過額をインフレーショナリー・ギャップ(略してインフレ・ギャップ)と呼ぶ。反対に,総需要は完全雇用産出高とインフレ・ギャップとの和に等しい,と考えることもできる。いま,かりに総需要Eが消費Cと投資Iの2項目から成っているとすれば,消費+投資は完全雇用産出高+インフレ・ギャップに等しくなる。そこでインフレ・ギャップは投資と完全雇用時の貯蓄(すなわち,完全雇用産出高-消費)の差額に等しいことになる(図参照)。つまり現在の家計の消費行動を前提として,現在企業が予定している投資を実行すると,完全雇用所得レベルで起こる投資超過額がインフレ・ギャップということになる(インフレ・ギャップがマイナスの値の場合はデフレ・ギャップという)。実際にインフレ・ギャップの存在や,その大きさを知るためには,完全雇用産出高を知ることが前提になる。しかし完全雇用産出高の推計にあたっては,技術進歩率や経済的な資本減耗率,エネルギー価格の変化の及ぼす影響など解決しなければならない技術的問題が数多くある。したがってインフレ・ギャップやデフレ・ギャップの推計もさまざまな前提を伴うことになってしまい,幅のある解答しか得られない悩みがある。
→インフレーション
執筆者:小椋 正立
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(荒川章義 九州大学助教授 / 2007年)
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…前者はふつうディマンドプル・インフレーションdemand‐pull inflation,後者はコストプッシュ・インフレーションcost‐push inflationと呼ばれる。たとえば完全雇用の状態にある経済において,政府が赤字財政により政府支出を増加させると総需要曲線が右にシフトして,インフレ・ギャップが発生し,物価が上昇するのが前者である。労働争議の結果,賃金が大幅に上昇し,経営者がそのコストを転嫁するために価格引上げを行ったとすれば,後者の例である。…
※「インフレギャップ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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