インフレギャップ(英語表記)inflationary gap

翻訳|inflationary gap

デジタル大辞泉 「インフレギャップ」の意味・読み・例文・類語

インフレ‐ギャップ

inflationary gapから》完全雇用状態で実現される生産水準を基準に、総需要が総供給を上回るときの両者差額をいう。

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精選版 日本国語大辞典 「インフレギャップ」の意味・読み・例文・類語

インフレ‐ギャップ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] inflationary gap から ) 労働力設備が完全に利用されている時、財政の赤字、投資輸出超過など需要を増加させるインフレ要因が、貯蓄輸入超過など需要を減少させるデフレ的要因を超過する差額。物価上昇の原因となる。

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改訂新版 世界大百科事典 「インフレギャップ」の意味・わかりやすい解説

インフレ・ギャップ
inflationary gap

国民経済の実質所得は,生産技術と資本ストックの量を与えられれば,すべての労働者を完全に雇用して産出できる財の実質価値(完全雇用産出高)を超えて増加することはできない,と考えられる。もし総需要がこの完全雇用産出高を超過していれば,財の価格は当然,上昇せざるをえないのでインフレーションが起こる。こうした観点から,総需要の完全雇用産出高に対する超過額をインフレーショナリー・ギャップ(略してインフレ・ギャップ)と呼ぶ。反対に,総需要は完全雇用産出高とインフレ・ギャップとの和に等しい,と考えることもできる。いま,かりに総需要Eが消費Cと投資Iの2項目から成っているとすれば,消費+投資は完全雇用産出高+インフレ・ギャップに等しくなる。そこでインフレ・ギャップは投資と完全雇用時の貯蓄(すなわち,完全雇用産出高-消費)の差額に等しいことになる(図参照)。つまり現在の家計の消費行動を前提として,現在企業が予定している投資を実行すると,完全雇用所得レベルで起こる投資超過額がインフレ・ギャップということになる(インフレ・ギャップがマイナスの値の場合はデフレ・ギャップという)。実際にインフレ・ギャップの存在や,その大きさを知るためには,完全雇用産出高を知ることが前提になる。しかし完全雇用産出高の推計にあたっては,技術進歩率や経済的な資本減耗率,エネルギー価格の変化の及ぼす影響など解決しなければならない技術的問題が数多くある。したがってインフレ・ギャップやデフレ・ギャップの推計もさまざまな前提を伴うことになってしまい,幅のある解答しか得られない悩みがある。
インフレーション
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インフレギャップ」の意味・わかりやすい解説

インフレ・ギャップ
inflationary gap

総需要が総供給をこえる分。ある与えられた供給能力 (完全雇用所得) に対応する意図された貯蓄に比べて,投資,財政の赤字支出,輸出超過の合計が大きい場合,インフレ・ギャップが存在するといい,逆に意図された貯蓄のほうが大きい場合,デフレ・ギャップが存在するという。デフレ・ギャップの場合には,企業はその生産水準を需要水準に調整することができるが,インフレ・ギャップの生じている場合には生産を増加することができず,その影響はすべて物価水準に現れ,一般的な物価水準の上昇が生じインフレーションとなる。これを J. M.ケインズは「真のインフレーション」と呼んだ。インフレ・ギャップ,デフレ・ギャップの概念は,ケインズ派の貯蓄・投資の所得決定理論を背景として生れてきたものであり,その理論的分析はケインズの『戦費調達論』 How to pay for the War (1940) に始る。またこの言葉が政策面で初めて用いられたのは,1941年4月イギリスの大蔵大臣の下院における予算演説においてであった。

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百科事典マイペディア 「インフレギャップ」の意味・わかりやすい解説

インフレ・ギャップ

inflationary gapの略。ある期間の国民所得のうち,購入に向けられずに貯蓄を意図される部分は有効需要とはならず,デフレ的要因であるのに対し,財政の赤字,投資,輸出超過は所得を形成しながらもその期間には購入の対象となるものを供給せず,有効需要となってインフレ的要因となる。前者を後者が超過する部分がインフレ・ギャップ(逆の場合はデフレ・ギャップ)で,需要が供給を超過して物価騰貴を生じる。もし過去の財の供給,遊休資源の稼働による供給があれば,インフレ・ギャップによる物価の騰貴は抑制されうる。
→関連項目インフレーション

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知恵蔵 「インフレギャップ」の解説

インフレ・ギャップ

均衡国民所得(総需要と総供給を一致させる国民所得)が完全雇用所得(完全雇用を達成可能な国民所得)を下回る場合、経済内には失業が生じ、完全雇用所得において、総需要<総供給の関係が成立する。このギャップのことをデフレ・ギャップという。逆に均衡国民所得が完全雇用所得を上回る場合、経済は完全雇用となり、完全雇用所得において、総需要>総供給の関係が成立する。このギャップのことをインフレ・ギャップという。

(荒川章義 九州大学助教授 / 2007年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「インフレギャップ」の意味・わかりやすい解説

インフレ・ギャップ
いんふれぎゃっぷ

ギャップ分析

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世界大百科事典(旧版)内のインフレギャップの言及

【インフレーション】より

…前者はふつうディマンドプル・インフレーションdemand‐pull inflation,後者はコストプッシュ・インフレーションcost‐push inflationと呼ばれる。たとえば完全雇用の状態にある経済において,政府が赤字財政により政府支出を増加させると総需要曲線が右にシフトして,インフレ・ギャップが発生し,物価が上昇するのが前者である。労働争議の結果,賃金が大幅に上昇し,経営者がそのコストを転嫁するために価格引上げを行ったとすれば,後者の例である。…

※「インフレギャップ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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