日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィーン工房」の意味・わかりやすい解説
ウィーン工房
うぃーんこうぼう
Wiener Werkstätte
1903年、ウィーンのヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザーが主宰して設立した工芸工房。過去文化圏からの分離を目ざしたゼツェッション(分離派)運動の一つの展開であった。05年には工房の体制がほぼ整い、金工、皮革工芸、製本などのそれぞれの分野で仕事が進められた。工房の作品は1点ずつ愛着を込めて制作され、新鮮な感情をもってはいるものの、むしろ時代に逆行するような手法がとられた。工房の洗練された趣味を示す代表作にブリュッセルのストックレー邸(1905~11)があげられる。設計ホフマン、建築内部の家具、食器、工芸品のすべてが工房で制作された。ホフマンの意図した優雅な造形は、種々の博覧会や展覧会への出品によって各国へ多くの影響を与えたが、近代合理主義思潮の台頭のもとでは手工芸性や趣味性のそしりを免れず、32年工房は閉鎖のやむなきに至った。
[高見堅志郎]