イギリスの思想家。女性解放思想を歴史上最初に体系化した。家庭教師や翻訳などで自活しつつ、フランス革命期のイギリス急進主義を学び、バークの『フランス革命の省察』(1790)に対する最初の批判である『人権の擁護』A Vindication of the Rights of Men(1790)を書いて注目され、ついで『女性の権利の擁護』A Vindication of the Rights of Woman(1792)を発表した。これは、当時の女性の生き方を批判し、男女平等、女性の精神的、経済的独立を説いた画期的な書である。1797年にW・ゴドウィンと結婚したが、同年、のちにシェリー夫人となって『フランケンシュタイン』を書いた娘Mary Wollstonecraft Shelley(1797―1851)を出産した際に死亡した。小説や評論など12冊の著訳書がある。
[白井 厚]
『白井堯子訳『女性の権利の擁護』(1980・未来社)』▽『W・ゴドウィン著、白井厚・堯子訳『メアリ・ウルストンクラーフトの思い出』(1970・未来社)』▽『白井厚・堯子著『女性解放論集』(1982・慶応通信)』
女性解放思想を最初に体系づけたイギリスの女性思想家。没落した中産階級の家に生まれて独学で学び,家庭教師,翻訳などで自活しながらR.プライス,T.ペインらと交流して急進主義的思想を身につけ,小説,歴史,紀行文などの12冊の著訳書を発表した。主著《女性の権利の擁護》(1792)は女性の経済的・精神的自立,参政権などを主張した画期的な著作。画家フュッスリとの恋愛,アメリカ人イムレーとの同棲をへて,1797年アナーキストのW.ゴドウィンと結婚。娘メアリ(詩人シェリーの妻となる)の出産に際し死去。彼女についての研究は,1970年を頂点とする女性解放運動と女性学の発展の中でアメリカを中心に高まり,とくに《女性虐待》(1798)などの小説は近年になって評価され始めた。彼女の業績は明治時代にすでに日本にも紹介され,大正から昭和にかけて,山川菊栄,厨川白村らが論文を,北野大吉が著作をのこしている。
執筆者:白井 尭子
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【歴史】
婦人参政権運動はイギリス,アメリカ合衆国でもっともねばり強く進められた。
[イギリス]
イギリスでは,17世紀の市民革命期に女性の国政への参加を求める請願が議会に提出され,18世紀の末にはM.ウルストンクラフトが《女性の権利の擁護》(1792)で婦人参政権について発言をし,19世紀にはいって,トンプソンWilliam Thompson(1785‐1833)が《人類の半数である女性の訴え》(1825)を書いてそれを要求し,チャーチスト運動のなかでも男女の同権が主張された。だが婦人参政権運動が本格化したのは1865年以降であった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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