エビスグサ(その他表記)oriental senna
sickle senna
Cassia tora L.

改訂新版 世界大百科事典 「エビスグサ」の意味・わかりやすい解説

エビスグサ
oriental senna
sickle senna
Cassia tora L.

熱帯に広く野生状態で分布し,薬用に栽培もされるマメ科の低木性草本植物。日本では沖縄でみられる。同属のハブソウと混同され,種子はぶ茶の原料とされる。高さ1mほどになり,全体に短毛を有する。葉は互生,通常3対の小葉からなる羽状複葉で,小葉は倒卵形,長さ2~3cm。花は黄色で放射状の5枚の花弁を有し,多くは2個が対をなして葉腋(ようえき)から出る。莢(さや)(豆果)は線形でやや扁平となり,長さ15~25cm,種子は多数で,長さ約5~8mm。種子は漢方決明子けつめいし)で,エモディンemodin,アロエエモディンaloeemodinなどの配糖体を含み,強壮,利尿眼病に用いられる。また,血圧降下や抗菌作用も知られている。市販のはぶ茶の多くはハブソウではなく,エビスグサの種子である。全草は緑肥にも用いる。またC.obtusifolia L.の種子も決明子と呼ばれ,同様に利用される。

 ハブソウC.occidentalis L.(英名coffee senna)はエビスグサにやや似ているが,羽状複葉は5~6対の小葉からなり,熱帯アメリカ原産の植物である。種子は漢方の望江南子(ぼうこうなんじ)で,エビスグサの種子と同様に利用される。

 エビスグサが所属するカワラケツメイCassiaは,熱帯を中心に約450種ほどを有するマメ科の大きな属で,薬用として有名なセンナをはじめ,ホソバセンナC.angustifolia Vahl.,ナンバンサイカチC.fistula L.,それにC.nodosa L.などの薬用植物を含むし,美しい花をつける種も多く,熱帯の公園や花壇にいくつかの種が栽植されている。高級木材として家具や細工,建築に利用されるタガヤサンも東南アジア大陸部に分布する本属の植物である。日本には一年草カワラケツメイが分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エビスグサ」の意味・わかりやすい解説

エビスグサ
えびすぐさ / 夷草
[学] Senna obtusifolia (L.) H.S.Irwin et Barneby
Cassia obtusifolia L.

マメ科(APG分類:マメ科)の一年草。茎は高さ1.5メートル。葉は互生する偶数羽状複葉で、2~4対の小葉よりなり、小葉は倒卵形、先端はわずかに突出し、長さ3~4センチメートル、ほとんど無柄。夏に葉腋(ようえき)に長い柄をもつ黄色花を1、2個つける。花弁は倒卵状円形で5枚、雄しべ10本、雌しべは1本。豆果は細長く弓状に曲がり、長さは15~20センチメートル、中に菱(ひし)状四辺形の種子が一列に並ぶ。種子は黄褐色ないし黒褐色、長さ4.5~6ミリメートル、幅3~3.5ミリメートルで、日本ではこれを決明子(けつめいし)と称して薬用に供し、はぶ茶と称して茶のかわりに用いる。各種のアントラキノン誘導体、粘液、タンパク質、脂肪油、ビタミンAを含有し、健胃、整腸、緩下(かんげ)、利尿、消炎作用をもつので、便秘、胃腸病、高血圧、眼病、口内炎などに用いる。中央アメリカ原産で、日本では古くから栽培されている。中国では熱帯アジア原産の類似植物ホソミエビスグサS. tora (L.) Roxb.(C. tora L.)を決明や草決明の名で栽培し、その種子を決明子と称している。この種子は暗赤褐色で、長さ3~4ミリメートル、幅2~3ミリメートルと前者よりも小粒で、重量も前者の半分しかない。決明は本種のことであり、前者にそれを用いるのは正しくないが、薬効に相違はないから実用上は問題はない。インドではこの種子を炒(い)ってコーヒーの代用としている。

[長沢元夫 2019年10月18日]


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百科事典マイペディア 「エビスグサ」の意味・わかりやすい解説

エビスグサ

熱帯アメリカ原産で,本州中部以西および熱帯アジアに広く野生化し,栽培もされるマメ科の一年草。高さ1m内外。葉は偶数羽状複葉で,夏に黄色花を開き,次いで細長い豆果を結ぶ。種子は,漢方では決明子(けつめいし)といわれ緩下剤,強壮薬にされ,またはぶ茶にもされる。
→関連項目カワラケツメイハブソウ

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