改訂新版 世界大百科事典 「エボシドリ」の意味・わかりやすい解説
エボシドリ
turaco
ホトトギス目エボシドリ科Musophagidaeに属する鳥の総称。大部分は全長45cmほどで,尾がやや長い。多くは冠羽をもつ。灰色,褐色,緑色,青色などの羽色をしており,くちばしは短くて湾曲している。全部で約20種がサハラ砂漠以南のアフリカに分布し,常緑広葉樹林からサバンナまで,樹木の生えている環境にすむ。木の実を主食にしているが,ときには芽や葉をも食べ,なかにはカタツムリなどの小動物を食べるものもいる。森林にすむものは羽色に緑色をもつものが多く,林内の背景にうまく姿を隠すことができる。いちばん外側のあしゆびを前後に自由に動かすことができるため,枝葉の間を伝い渡るのは実に巧みである。繁殖期は種やすむ地方によってかなり異なっている。赤道付近にすむものでは一年中巣が見つかるが,それ以外の地域のものは雨季に入ってから繁殖する。4~7月と9~1月の2季に繁殖が確認されている種もあるが,1羽の雌は年に1回しか繁殖しないらしい。巣はハトの巣に似ており,小枝を組んで皿形につくりあげ,白っぽい卵を2~3個産む。抱卵はおもに雌が行い,16~18日で孵化(ふか)する。雛は親鳥の吐き戻す木の実で育ち,孵化後6週間くらいで飛べるようになる。この類の羽毛に見られる緑や赤の色彩は,この類独自の色素による。多くの鳥では,緑色は構造色かメラニンとカロチノイドの混合色であるが,この類の場合にはツラコバジンturacoverdinという単一の緑色素によっている。一方,頭や翼にある赤い羽色は,ツラシンturacinという色素によるものである。代表種にカンムリエボシドリCorythaeola cristataやオウカンエボシドリTauraco hartlaubiがいる。前者は中央・西アフリカに分布し,全長約80cmもある大型種,後者は東アフリカに生息する中型種。
執筆者:樋口 広芳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報