ゴールド(読み)ごーるど(英語表記)Michael Gold

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴールド」の意味・わかりやすい解説

ゴールド(Michael Gold)
ごーるど
Michael Gold
(1893―1967)

アメリカの小説家、ジャーナリスト。本名アイツォク・グラニッチ。ユダヤ系移民を父としてニューヨーク貧民街に生まれ、夜警工員など底辺の労働者生活を経てコミュニストになる。若くして左翼文芸誌『リベレイター』の編集に参加、1926年『ニュー・マッセズ』創刊以後は編集幹部を務め、プロレタリア文学旗手として活躍した。自伝長編小説『金のないユダヤ人』(1930)は、スラム街に住むユダヤ系移民たちの生活苦を愛情豊かな目で描いている。ほかに労働者生活のスケッチ集『一億二千万』(1929)、評論集『世界を変えろ!』(1937)など。

[大浦暁生]

『高橋徹訳(抄訳)『金なきユダヤ人』(『全集・現代世界文学の発見4 亡命とユダヤ人』所収・1970・学芸書林)』


ゴールド(Herbert Gold)
ごーるど
Herbert Gold
(1924― )

アメリカのユダヤ系小説家。オハイオ州クリーブランドに生まれる。コロンビア大学学士修士課程を終え、フランスのソルボンヌ大学フルブライト奨学金留学。その後、大学講師として各地を転々とし、かたわら作家生活を志向する。代表作『父たち』(1967)は、帝政ロシア期ポグロム(大虐殺)の恐怖のなかでユダヤの信条を守り続けた曽祖父(そうそふ)、祖父生涯に始まり、13歳で無一文で渡米し不動産業者として成功する父の一生を通して、一ユダヤ系移民の系譜をたどりながらアメリカの社会史を描く。ほかに、中年弁護士の自己発見の過程を描く処女作『英雄の誕生』(1951)、ニューヨークの若者の風俗を描いた『塩』(1963)、大学紛争をモチーフにした『アメリカ的成功』(1970)、新しい夫婦関係を描いた『彼/彼女』(1980)、自伝『わが過ぎし二千年』(1972)など多数。

[大津栄一郎]

『大津栄一郎訳『父たち』(1973・白水社)』『宮本陽吉訳『彼/彼女』(1984・新潮社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴールド」の意味・わかりやすい解説

ゴールド
Gold, Herbert

[生]1924.3.9. クリーブランド
アメリカの小説家。コロンビア大学卒業。創作に従事する一方,各地の大学で文学を教える。処女作『英雄の誕生』 Birth of a Hero (1951) は,中年のユダヤ人弁護士の自己発見の物語であり,『父たち』 The Fathers (66) では,作者自身の家系を扱い,ロシアのユダヤ人として生きた曾祖父や祖父,若くしてアメリカに渡り,苦難の末クリーブランドの青果商として地歩を固める父の姿を描いた。ほかにニューヨークにおける空虚な男女の生活の物語『塩』 Salt (63) ,サンフランシスコ周辺の若者の姿を描いた『偉大なアメリカのジャックポット』 The Great American Jackpot (70) や,短編集,評論集がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android