旧仙台藩の領内である宮城県全部と岩手県一関・水沢地方,福島県北部・会津および山形県米沢地方に行われる祝歌。仙台地方では《君が代》の異称もあるように,必ず祝宴の劈頭,全員が正座して厳かに手拍子を打って〈さんさ時雨か萱野の雨か 音もせで来てぬれかかる〉以下3首(三幅一対)を斉唱する。米沢・会津地方では二幅一対である。歌の起源については,藩祖伊達政宗が1589年(天正17)6月5日に磐梯山麓摺上原(すりあげはら)で会津の蘆名義弘を破った際の戦勝の歌と称し,終りの囃子〈ショウガイナ〉に〈勝凱那〉の字を当てる俗説があるが,これはまったくの付会説である。現行の詞型・曲態から考えても,そのように古いものではなく,江戸中期以後,京都以西,とくに瀬戸内海沿岸で行われた恋の流行歌(はやりうた)が,おそらく伊予(愛媛県)の宇和島藩(初代秀宗は伊達政宗の長子)との交流により,東北の伊達領一帯に移入されたものと思われる。元歌の初見は,1699年(元禄12)序の《はやり歌古今集》所載の《古今節》(山椒太夫くどき)。このほかに1704年(宝永1)刊の《落葉集》巻五や,元禄ころの《御船歌枕》,1809年(文化6)の《鄙廼一曲(ひなのひとふし)》,22年(文政5)の《浮れ草》国々田舎唄の部の《下の関節》などほか,全国各地の盆踊歌,雨乞歌,田植歌などに類歌が知られる。〈様は萱屋の雨ではないか 音もせで来て降り心〉(《御船歌枕》)が古型である。
執筆者:浅野 建二
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宮城県を中心に岩手、福島両県にかけての旧伊達(だて)領一円の民謡。同地方で祝い唄(うた)として歌われてきたもので、その源流は、文化・文政(ぶんかぶんせい)年間(1804~30)に江戸吉原を中心にして大流行した情歌のようなものらしい。それが花柳界へ入って拳(けん)遊びの下座囃子(ばやし)に利用されるようになった。江戸土産(みやげ)として諸国へ広められていったおり、東北地方へも伝えられ、会津では『目出度』、山形では『ショオガイナ』、伊達領では『さんさ時雨』の名で祝い唄に利用されるようになった。「ヤートオヤートオ」の囃子詞(ことば)は拳遊びの「ヤートオ来ましてドン」の略である。
[竹内 勉]
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