シェルパ(読み)しぇるぱ(英語表記)sherpa

翻訳|sherpa

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シェルパ」の意味・わかりやすい解説

シェルパ
しぇるぱ
sherpa

ネパールヒマラヤの登山時に雇用される案内人。チベット語では「東の人」の意味。東部チベットにいた人々が18世紀中ごろヒマラヤを越えて南下、農業や牧畜を業とした。現在はエベレスト山南麓(なんろく)のソロクンブ地方を中心とする3000メートル以上の高所に住むチベット系ネパール人の総称であり、またカースト名でもある。宗教はチベット仏教(ラマ教)がおもで、性質は温順かつ明朗、高度順化に富む強健な体質から、各国の登山隊に初めはポーターporterとして雇用されたが、のちにポーターとは区別して登山の直接的な協力者として一躍有名になった。

 エベレストの初登頂者の一人テンジンTenzing Norgay(1914―86)や、日本のマナスル隊などに同行し、その後1961年大阪市立大学のランタン・リルン隊に同行中遭難死したガルツェンGyaltsen Norbu(1918―61)らは優秀なシェルパ頭(サーダー)であった。その後、シェルパ登山組合が組織され、雇用規定なども定められている。ネパールでのヒマラヤ登山やトレッキングでは、シェルパの協力が必要である。カラコルム方面ではシェルパは住んでいないのでハイポーターとよび、登山技術を必要としない低地のみのローポーターと区別している。

[徳久球雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シェルパ」の意味・わかりやすい解説

シェルパ
Sherpa

エベレストなどのヒマラヤ登山で,隊の一員として荷物運搬,案内などを務める人。本来はネパール北東部のソロ・クーンブ地方に住むチベット系の一民族であるシェルパ族のことをさす。 20世紀に入りイギリス人によるシッキム・ヒマラヤやエベレスト登山が行なわれるようになると,チベット人とともに高所に強いシェルパ族がポーターとして登山隊に雇われる機会が生まれた。ほどなくポーターの束ね役 (サーダー) として広く活躍するようになり,シェルパの名はヒマラヤ登山隊に欠かせない存在として高所ポーターの代名詞となった。 1950年アンナプルナI峰のアンタルケイ,1953年エベレストのテンジン・ノルゲイ,1954年チョー・オユーのパサン・ダワ・ラマ,1956年マナスルのギャルツェン・ノルブなどは初登頂に大きく貢献した。

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