システム理論(読み)システムりろん(その他表記)systems theory

最新 心理学事典 「システム理論」の解説

システムりろん
システム理論
systems theory

システムとは一つのまとまり(集合,集まり)であり,それを構成する要素(部分,成分)は互いに関連し,なんらかの機能を果たしていることを前提としている。この機能に関連しない要素は取り除き,システムに含まれる要素を限定し,また同時に要素間の関連を整理することによって,システムを特定する。システムの機能は,それぞれの要素の機能の総和以上のものとなる。システムの要素間の相互作用から生じる効果を創発効果emergent effectという。システムという概念は非常に一般的であるため,システムの観点から諸科学で扱うモデルの同型性に着目し,諸科学の統合的な見通しが可能になる。これがシステム的思考であり,1950年代に諸科学の共通性に着目するシステム理論が,明確な形で姿を現わすことになった。

 システムには,機械などの物質システム,動物などの生体システム,概念,文字,数式などを要素とする抽象的システムなどさまざまな種類がある。心理学が対象とする人間はいうまでもなく一つのシステムである。このシステムは閉じておらず,ほかの人間と交流する開放的なシステムである。同様に組織や文化などもシステムである。知覚のようなより基本的な心理機能においても,ゲシュタルト心理学が指摘するように,全体性が重要な決定因である。心理学もこの統合的な見通しによって,他の学問分野のモデルを直接的に導入することや,理論の完成のために欠けている部分のヒントを得ることができる。

 システムという考え方は,非常に古くからあったと考えられるが,とくに科学的にシステムを考える動きは,ホメオスタシスhomeostasisとよばれる現象の研究を一つの源とする。ホメオスタシスとは,環境の変化にもかかわらず,生物が体内の状態を一定に保つシステムである。この生体のシステムは,それが開放されていること,要素間に情報のフィードバックがあることが特徴である。情報のフィードバックは,工学的にはサイバネティックス(生物と機械における通信,制御,情報処理の問題を統一的に扱う総合科学)の発展と結びついている。サイバネティックスの成功は社会的にも大きなインパクトを与え,情報理論や通信工学の発展とも関連し,このシステム理論が生物学や工学だけではなく,現在では社会科学にも影響を与えている。
〔繁桝 算男〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「システム理論」の意味・わかりやすい解説

システム理論
システムりろん
system theory

20世紀に入って生物学や工学において生じた一般システム理論 general systems theoryが,やがて社会科学の分野へ適用されるようになった。 T.パーソンズ,G.ホマンズなどの社会システム論,D.イーストン,G.アーモンドなどの政治システム論が,それである。これらに共通の前提はシステムを「相互作用を営みつつある諸要素のセット」としてとらえることである。なお,このような考え方が,国際関係をとらえる場合に応用されて国際システム論 (→国際体系論 ) ができている。

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