横軸に星のスペクトル型,縦軸に星の絶対等級をとった図表。略してHR図ともいう。E.ヘルツシュプルングが1911年にプレヤデス,ヒヤデス両星団の星の色指数を横軸,見かけの等級を縦軸に示す図を作り,H.N.ラッセルが13年に当時ようやく得られた数十の星の視差に基づく絶対等級を縦軸にとる図を作った。これがこの図表の始まりで,2人の名にちなんで呼ばれるようになった。横軸を色指数とする色・光度図もHR図の代用となる。星の集団によってHR図上の分布が違うので,HR図はその集団の構成要素の特徴を直観的に検知するのに役だつ。
星が絶対等級の大小によって二大別されること,G型以下の低温型ではその差別がとくに顕著であることは20世紀の初頭から知られていたが,HR図という表示によって事情はいっそう明らかになった。図1は距離15光年以内の星のHR図で,銀河系の円盤部の星の構成を代表すると思われる。この図の左上から右下にかけての帯状部に星が多い。ここをHR図の主系列,ここにある星を主系列星という。主系列の右が巨星と超巨星の領域であるが,図では巨星は1個もない。見かけの明るい星で作ったHR図(図2)には多数の巨星がある。巨星は実数は少ないが,遠くからでも見えるからなのである。HR図の下辺部は白色矮星(わいせい)の領域であるが,これがわかったのは1930年以後のことであった。
HR図上における上述のような星の分布は,星の内部構造と進化の理論で説明がつく。理論ではHR図の横軸は星の表面温度Tの対数,縦軸は星の放射エネルギーの総量L(太陽のそれを単位とする)の対数を用いることが多い。星の半径Rは,L∝R2T4の関係を用いてHR図(図3)の上にR(太陽単位)=一定の軌跡をかくことができる。また,主系列星の放射エネルギーの総量は質量の関数なので,主系列を質量M(太陽単位)で目盛ると,質量に関連する星の進化の軌跡もHR図(図4)にかくことができる。
星団の見かけの等級を縦軸にとった図を作り,これを標準的なHR図と比べて縦軸を上下調節することによって星団の距離を知り,また,進化の理論的軌跡と比較して星団の年齢を知ることもできる。
→恒星
執筆者:大沢 清輝
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…ただし,質量のあまり大きくない星ではこの主系列前の巨星または亜巨星の時期があり,おうし座T型星はこれに相当する。恒星の大部分は主系列星であり,後出のヘルツシュプルング=ラッセル図(HR図)上に列をなして分布するのでこの名がある。主系列星は太陽と同じく中心部で水素をヘリウムに転換する熱核反応によってエネルギーを供給している恒星である。…
…星団の恒星はほぼ同じ距離にあるので,恒星の絶対光度を直接相互に高い精度で比較できる。 ヘルツシュプルング=ラッセル図(HR図)は恒星の進化のようすをあとづけて個々の恒星の質量を知り,星団の年齢を知るための手がかりを与えてくれる。HR図とは,横軸に恒星の表面温度または色またはスペクトル型をとり,縦軸に恒星の絶対光度をとった図である。…
※「ヘルツシュプルングラッセル図」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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