精選版 日本国語大辞典 「ず」の意味・読み・例文・類語
ず
※万葉(8C後)一五・三七七五「あらたまの年の緒長くあは射礼(ザレ)ど異しき心をあが思(も)はなくに」
[語誌](1)活用として普通に説かれるのは、「ぬ」の系列の活用と、「ず」および「ず」に「あり」が熟合した「ざり」の系列の活用とがあるということである。
(2)「ざり」系は、ラ変型の活用で、上代には例が少なく、形容詞の補助活用と同様に、「ず」の補助活用として中古以降多く用いられた。
(3)「ず」は、終止形のほか、連用修飾法、中止法、また、助詞「て」「は」助動詞「き」「けむ」「けり」等につづく用法があり、連用形、終止形の二形と認められる。成立に関して、「ぬ」の系列の連用形「に」と動詞「す」の結合した「にす」からの変化とみられる。
(4)「ぬ」の系列の活用は未然形としては、上代、いわゆるク語法の「なく」や東国方言の「なふ」の「な」をあてることができ、連用形の「に」は、上代に「しらに」「かてに」などの連用修飾法、また、「万葉‐三九〇二」に「梅の花み山としみにありともやかくのみ君は見れど飽か爾(ニ)せむ」の例があって、四段活用と認められる。ただし、終止形、命令形の確かな例は見あたらない。
(5)中世以後の口語では、「ざり」系では主として「ざった」が目立つほか、連体形の「ぬ」の終止法が一般化した。中世末期には関東では、「ない」が一般化し、関西系の「ぬ」と対立するようになった。関東でも、「ませぬ」の変化した「ません」は広く用いられており、その他慣用的な用法としては「ぬ」系も残っているが、明治以後、国定の読本をはじめ、口語文の標準としては、「ない」に代わられたといってよい。連用形「ず」は、連用中止法として、主として書きことばに用いられている。また、助詞「に」「と」を伴って、「ずに」「ずと」となることも多い。→助動詞「ない」・「ずに」
(2)「ざり」系は、ラ変型の活用で、上代には例が少なく、形容詞の補助活用と同様に、「ず」の補助活用として中古以降多く用いられた。
(3)「ず」は、終止形のほか、連用修飾法、中止法、また、助詞「て」「は」助動詞「き」「けむ」「けり」等につづく用法があり、連用形、終止形の二形と認められる。成立に関して、「ぬ」の系列の連用形「に」と動詞「す」の結合した「にす」からの変化とみられる。
(4)「ぬ」の系列の活用は未然形としては、上代、いわゆるク語法の「なく」や東国方言の「なふ」の「な」をあてることができ、連用形の「に」は、上代に「しらに」「かてに」などの連用修飾法、また、「万葉‐三九〇二」に「梅の花み山としみにありともやかくのみ君は見れど飽か爾(ニ)せむ」の例があって、四段活用と認められる。ただし、終止形、命令形の確かな例は見あたらない。
(5)中世以後の口語では、「ざり」系では主として「ざった」が目立つほか、連体形の「ぬ」の終止法が一般化した。中世末期には関東では、「ない」が一般化し、関西系の「ぬ」と対立するようになった。関東でも、「ませぬ」の変化した「ません」は広く用いられており、その他慣用的な用法としては「ぬ」系も残っているが、明治以後、国定の読本をはじめ、口語文の標準としては、「ない」に代わられたといってよい。連用形「ず」は、連用中止法として、主として書きことばに用いられている。また、助詞「に」「と」を伴って、「ずに」「ずと」となることも多い。→助動詞「ない」・「ずに」
ず
〘助動〙 (「むず(んず)」の撥音無表記。また、中世以後の「うず」の変化したもの) 意志や推量の意を表わす。
※史記抄(1477)一〇「王僚は可殺とはやすく殺さずと云ぞ」
※滑稽本・東海道中膝栗毛‐発端(1814)「すいた男に添せずとおもひきはめ、わざわざめしつれて参っておざるヤア」
[補注]「万葉」の東歌、「我をかづさ寐もかづさか受(ズ)とも」(三四三二)、「麻笥(をけ)にふすさに績(う)ま受(ズ)とも」(三四八四)、「風吹か受(ズ)かも」(三五七二)の「ず」を、この「ず」とし、上代東国方言に用いられていたとする説がある。
ず づ
〘接頭〙 (「図」「頭」と表記されることが多いがあて字) とびぬけている、度外れているの意を添える。「図横柄」「図抜ける」「図外れ」など。
ず
「重みす」→「おもんず」、「空にす」→「そらんず」などの「み」または「に」に融合したサ変動詞「す」。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報