ダイグロシア(英語表記)diglossia

翻訳|diglossia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダイグロシア」の意味・わかりやすい解説

ダイグロシア
diglossia

一つ言語集団において,同じ言語二つ変種が並存していること。片方文語もしくは威信の高いことば,もう片方は大多数の民衆の話しことば(口語)である標準語であることが多い。こうした状況は世界中の多くの言語集団に存在する。たとえばギリシアでは,古代ギリシア語の影響を強く受けているカサレブサが文語,ディモティキが口語の標準語である(→ギリシア語)。アラブ世界には,コーランに使われている古典アラビア語とともに,エジプトモロッコ,そのほか諸国で話される口語が存在する(→アラビア語)。なお,同じ共同体の成員が二つ以上の言語を話す 2言語併用と同じ意味で使用されることもある。この例としては,ニューヨークのヒスパニック社会で多くの人々がスペイン語と英語を話し,社会的状況やその場の必要性に応じて使い分けていることがあげられる。(→言語社会学

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大学事典 「ダイグロシア」の解説

ダイグロシア[希]

ギリシア語で「2(ダイ)/言語(グロシア)」を意味し,1959年,アメリカ合衆国の社会言語学者チャールズ・ファーガソン,C.が,同一言語の社会階層的2変種状況を指して提唱した概念である。事例として彼は,スイスにおける標準ドイツ語とスイス方言,ギリシアの古典語(カタレブサ)と民衆語(デモーティキー)などを列挙した。前者高位変種,後者が低位変種である。1967年,アメリカの言語社会学者ジョシュア・フィッシュマン,J.が,社会階層的2言語状況を指す用語に拡張し,現在ではこの意味での使用が一般的である。1980年代に,書き言葉における同様の状況(社会階層的1言語2文字使用状況)を指して「ダイグラフィア」(2文字)という概念が提唱されたが,その使用はそれほど広まっているとはいえない。大学に関していえば,俗語プレスティージが徐々に高まり,ラテン語の権威を脅かそうとする,17世紀後半から18世紀にかけての状況がダイグロシア的状況といえる。また現代世界における大学の言語状況は英語を高位変種とし,各国の国語を低位変種とするダイグロシア状況にあるといってよいかもしれない。
著者: 原 聖

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダイグロシア」の意味・わかりやすい解説

ダイグロシア
だいぐろしあ
diglossia

社会言語学の用語。アメリカのファーガソンC. A. Fergusonが最初に提唱した概念。多言語社会においては二言語、単一言語社会においては二言語変種(共通語と地方方言、改まった文体とくだけた文体など)を社会的な場面の性質に応じて使い分け、その使い分け方が社会的に定まっている現象をいう。言語・言語変種の切り替えは「コード切り替え」code-switchingとよばれる。

[国広哲弥]

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百科事典マイペディア 「ダイグロシア」の意味・わかりやすい解説

ダイグロシア

社会言語学において,一つの社会で用いられている二つの言語,あるいは一つの言語のバリアント(異形)が,機能的・社会的にランクづけされ使い分けられている状態をさす用語。一般に,高位に位置づけられ公的場面で用いられるものを高位言語,より私的な場面に限られるものを低位言語という。

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