ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツクシガモ」の意味・わかりやすい解説
ツクシガモ
Tadorna tadorna; common shelduck
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カモ目カモ科の鳥。ヨーロッパから中国北部にかけて繁殖し,冬期には北アフリカ,インド,中国南部などに渡る。日本では数の少ない冬鳥で,広い干潟の海岸に生息する。九州の有明海では定期的に見られるが,九州以外の地方では現在きわめてまれである。潮の引いた干潟で甲殻類,軟体動物などを食べる。食べるときにくびをのばしくちばしを地面に垂直にするように使うので,カモ類よりガン類の姿に似る。他のカモ類と異なり,ノウサギ,キツネなどが使った,あるいは天然の地中の穴の中に巣をつくる。1腹の卵数は8~12個で,雌が約4週間抱卵する。全長約63cm。頭頸(とうけい)部は光沢ある黒色で,体は大部分は白いが,背から胸にかけて幅広い栗色の横帯がある。肩羽と風切羽は黒い。くちばしと足は濃いピンク色。繁殖期の雄には額に瘤状の突起ができる。はばたきはゆっくりしていて,群れで飛ぶときにはV字形をつくる。アック,アック,エアックと聞こえる大きな声で鳴く。色が鮮やかなため,動物園や公園でよく飼われている。
執筆者:柳沢 紀夫
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鳥綱カモ目カモ科の鳥。ヨーロッパから中央アジア、シベリア南部、モンゴル、チベットにかけて、旧北区中部に広く繁殖し、アフリカ北部、インド北部、中国に渡るといった大陸性の分布をなす。日本には九州などに少数が大陸から迷い出て渡来し、有明海(ありあけかい)など広い干潟の泥生動物を食べるが、イギリスではとくに巻き貝が主食であるという。一定の換羽地に、換羽のための渡りを行う習性がある。巣は、ウサギの巣などの土穴を探して用いる。1腹9卵ぐらいであるが、巣穴の少ないこともあり、一つの穴に数羽の雌が合同で産卵してそれぞれの卵を抱き、合計30卵に達することもある。雛(ひな)は約30日で孵化(ふか)する。100羽近くの群れをつくることもある。全長約63センチメートル。雄の頭は緑色の光沢ある黒色、嘴(くちばし)は赤く繁殖期には鼻瘤(びりゅう)がある。体は全体に白く、肩の黒帯、栗(くり)色の胸帯、それに続く胸中央の黒帯がある。足はピンクである。雌は全般に雄より淡色をしている。
ツクシガモ属には、アフリカ、アジア、オーストラリア、ニュージーランドに計7種のそれぞれ特徴のある羽色をした種があり、アジア産で絶滅したと疑われているカンムリツクシガモを含む。また、アカツクシガモも日本に少数渡来する。
[黒田長久]
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