ツリスガラ (釣巣雀)
スズメ目ツリスガラ科Remizidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科の鳥は全長9~12cm。先のとがった細いくちばしをもつ小鳥。上面が褐色や灰褐色で,下面は淡いじみな羽色をしている。やぶや樹木がまばらに生えた草原,湿原,疎林,林縁に群れをつくってすむ。繁殖期には,雄が垂れ下がった細い枝の先端に,植物の繊維を使って細長いつり巣をつくる。アフリカに6種,ヨーロッパからアジアに1種,北アメリカに1種が分布する。ツリスガラRemiz pendulinus(英名penduline tit)は全長約11cm,背が褐色で,下面が淡い。頭部は灰色をしていて,過眼線が雄では黒色,雌では褐色みが強い。川辺の樹木が生えた草原やヨシ原にすみ,昆虫類を主食としている。秋から冬には群れをつくり,枯れたヨシの茎を巧みによじ登り,細い鋭いくちばしで茎の中に潜む昆虫類の幼虫を引き出して食べる。ヨーロッパから中国まで分布し,日本には少数が冬鳥として九州地方に渡来する。
執筆者:齋藤 隆史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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ツリスガラ
Remiz consobrinus; Chinese penduline tit
スズメ目ツリスガラ科。近年まで,ヨーロッパなどに分布するニシツリスガラ R. pendulinus の亜種とされていたが,分布範囲や形態的な違いなどから,独立した種として扱われるようになった。全長 11cm。雄は頭上が灰色,眉斑が白く,過眼線が黒い。背は褐色,脇が淡い褐色,腹は白く,翼と尾羽は黒褐色。雌は頭上と過眼線が灰褐色,ほかの部位は雄とほぼ同色。中国北東部やアムール川中流域で繁殖し,中国南部や朝鮮半島,本州西部や九州地方で越冬する。以前はまれな冬鳥(→渡り鳥)として渡来していたが,今日では毎年渡来するようになり,渡来地も千葉県まで北へ拡大している。越冬地ではアシ原に小群をつくって生活する。「つぃー,つぃー」と鳴く。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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ツリスガラ
つりすがら / 吊巣雀
penduline tit
広義には鳥綱スズメ目ツリスガラ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。種としてのツリスガラRemiz pendulinusは全長11センチメートルの小形の鳥で、背面は灰褐色、頭頂は灰色、目を通る黒い部分があり、眉紋(びもん)は白い。腹面は白っぽい。ユーラシアの中緯度地方に分布し、日本には九州、四国の一部に越冬に渡ってくる。まれに本州各地にも現れる。葦(あし)原にいて、小群で過ごしている。繁殖地では水辺にすみ、一夫多妻で、雄は植物性繊維を使い袋状の巣をつくって雌を呼び込む。巣は水上に出た低木の枝につるす。雌が抱卵を始めると、雄は次の雌をよぶために次の巣づくりにとりかかる。
ツリスガラ科Remizidaeはユーラシア、北アメリカ、アフリカに分布し、10種が知られている。大部分はアフリカの森林に集中し、コモンアフリカツリスガラAnthoscopus punctifronsなどがある。北アメリカのアメリカツリスガラAuriparus flavicepsは砂漠の低木にすむ。ヒマラヤの1種を除いて、袋状の巣をつくる。昆虫食である。
[中村登流]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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