日本大百科全書(ニッポニカ) 「テンゲル石」の意味・わかりやすい解説
テンゲル石
てんげるせき
tengerite
イットリウム族希土の含水炭酸塩鉱物。木村石およびロッカ石とともに、結晶学的に共通性のあるテンゲル石‐木村石系を構成する。2013年に記載された新鉱物の肥前石hizenite-(Y)(化学式Ca2Y6[CO3]11・14H2O)もテンゲル石‐木村石系に加えられる。自形はおそらく針状で、これが放射状集合をなすが、多くは皮膜状あるいは粉末の集合からなる。花崗岩(かこうがん)質ペグマタイト中、含イットリウム族希土鉱物から導かれた二次鉱物として産する。日本では福島県川俣(かわまた)町水晶山などから産する。
共存鉱物はロッカ石、木村石、バストネス石などのほか、初生鉱物としてはガドリン石や含イットリウム族希土鉄礬(ばん)ざくろ石Y-bearing almandine(化学式(Fe2+,Y)3(Al,Fe2+)2[SiO4]3)がある。ほかに微斜長石、石英、黒雲母(くろうんも)、ジルコン、フェルグソン石など。同定は花崗岩質ペグマタイト中で白色であることによる。非常に低硬度の皮膜をなす。光沢はほとんどつねに土状。命名はスウェーデンの化学者・地質学者で、本鉱の最初の研究を行ったテンゲルC.Tengerにちなむ。
[加藤 昭 2017年12月12日]