精選版 日本国語大辞典 「は」の意味・読み・例文・類語
は
[1] 〘係助〙 (現在では「わ」と発音する)
(ロ) 連用語を対比的に提示する。
※万葉(8C後)五・八二一「青柳梅との花を折りかざし飲みての後波(ハ)散りぬともよし」
(ニ) 「Aが…する(である)一方、BはBで…する(である)」の形で、Aの行為・状態に対して、Bが独自に類似した行為を行なう(類似した状態である)ことを表わす。「この件は警察も捜査に着手したが、検察は検察で独自に動きはじめていた」「ここは冬は冷え込むし、夏は夏でとても暑い」
※万葉(8C後)九・一八〇七「髪だにも 掻き者(は)梳(けづ)らず」
※史記抄(1477)一八「見つけはすれども、捕はえせぬそ」
④ 「…は(には・ことは)…が」の形で同じ形容詞・形容動詞・動詞をうけて、その観点・次元については…であるということが認められるが、その意義を減少させるような要素もある、ということを示す。「…は…が」の形では、形容動詞は初めのは語幹、後のは終止形を用いる。「このあたりは静かは静かだが駅からは遠い」「この時計は動くには動くが正確でない」
※万葉(8C後)一八・四〇三九「音のみに聞きて目に見ぬ布勢の浦を見ず波(ハ)上(のぼ)らじ年は経ぬとも」
[二] 連体修飾の文節を受け、対比的に被修飾語との関係を強める。
※方丈記(1212)「一条よりは南、九条より北」
[2] 〘終助〙
① 文末にあって感動を表わす。上代には単独のものはほとんどなく、「はや」「はも」の形をとる。→語誌(6)。
※古事記(712)中・歌謡「さねさし 相摸の小野に 燃ゆる火の 火中に立ちて 問ひし君波(ハ)も」
※源氏(1001‐14頃)紅梅「はかばかしき御後見なくては、いかがとて、北のかた、そひてさぶらひ給は」
② 中世以後、会話文に専用される傾向が生じ、話手自身に対して念を押すような気持での詠嘆を表わす。→語誌(6)。近世には「わ」と表記されることが多くなり、現代では主として女性が用いる。→わ〔終助詞〕。
※史記抄(1477)四「すはよいはとて追たそ」
[語誌](1)(一)で連用語と述語の結びつきが非常に強められると、排他的な気持の含まれる場合も生じ、またその排すべき事柄を明示すれば(一)①(ロ) のような対比的用法ともなる。
(2)格助詞「を」を受けると、(一)(一)①の「は」は濁音化して「をば」となる。→ば〔係助詞〕。
(3)(一)(一)①には地名に関して、それを含むさらに広い地域を先に提示する特殊な用法もある。「肥前の国は唐津の住人多々良三平君が」〔吾輩は猫である〈夏目漱石〉五〕など。
(4)形容詞の連用形あるいは副詞を受けながら打消や逆接の表現とならず、(一)(一)②の「は」がきわめて軽く、間投助詞的になる場合もある。「天離(ざか)る鄙にも月は照れれども妹そ遠く波(ハ)別れ来にける」〔万葉‐三六九八〕など。
(5)(一)(一)⑤の「は」の受けている形容詞語尾「…く」、および打消「ず」を未然形とする説もある。いずれにせよ、この場合の「は」は清音に発音されたものであるが、近世には「ずば」「くば」の例が現われる。これらは、活用語の未然形に接続詞「ば」が付いた形からの類推であらわれたものと考えられる。「それ程名残り惜しくば、誓詞書かぬがよいわいの」〔浄瑠璃・心中天の網島‐中〕、「人足をたのまずばなるめへ」〔滑稽本・八笑人‐三下〕など。
(6)(二)の①と②の用法に根本的な違いはないが、もっぱら会話文に用いられる②に対して、古い用法の①は、和歌にも散文にも用いられ、係助詞の文末用法とみることができる。
(2)格助詞「を」を受けると、(一)(一)①の「は」は濁音化して「をば」となる。→ば〔係助詞〕。
(3)(一)(一)①には地名に関して、それを含むさらに広い地域を先に提示する特殊な用法もある。「肥前の国は唐津の住人多々良三平君が」〔吾輩は猫である〈夏目漱石〉五〕など。
(4)形容詞の連用形あるいは副詞を受けながら打消や逆接の表現とならず、(一)(一)②の「は」がきわめて軽く、間投助詞的になる場合もある。「天離(ざか)る鄙にも月は照れれども妹そ遠く波(ハ)別れ来にける」〔万葉‐三六九八〕など。
(5)(一)(一)⑤の「は」の受けている形容詞語尾「…く」、および打消「ず」を未然形とする説もある。いずれにせよ、この場合の「は」は清音に発音されたものであるが、近世には「ずば」「くば」の例が現われる。これらは、活用語の未然形に接続詞「ば」が付いた形からの類推であらわれたものと考えられる。「それ程名残り惜しくば、誓詞書かぬがよいわいの」〔浄瑠璃・心中天の網島‐中〕、「人足をたのまずばなるめへ」〔滑稽本・八笑人‐三下〕など。
(6)(二)の①と②の用法に根本的な違いはないが、もっぱら会話文に用いられる②に対して、古い用法の①は、和歌にも散文にも用いられ、係助詞の文末用法とみることができる。
は
〘感動〙
① 勢いよく笑う声。はあ。
※平家(13C前)三「こらへずして、一同にはとわらひあへり」
② 応答のことば。はい。かしこまっていうときに用いる。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「Ha(ハ) ソノ コトデ ゴザル〔教化物語〕」
③ 驚いたり、喜んだり、当惑したりする時に発する声。
※虎明本狂言・薬水(室町末‐近世初)「は、是はいかな事。児におなりやったは」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報