バスケットメーカー文化(読み)バスケットメーカーぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「バスケットメーカー文化」の意味・わかりやすい解説

バスケット・メーカー文化 (バスケットメーカーぶんか)

北アメリカ南西部の先史時代文化の一つで,アナサジ文化の前半期に比定される。デザート文化に比定されるコチーズ文化を基盤に発展した。Ⅰ期は不明な点が多く,通例Ⅱ期とⅢ期に分けられる。バスケット・メーカーBasket Maker Ⅱ文化(前100-後400)は,トウモロコシカボチャの栽培はあったものの,野生植物の種子採集狩猟にも依存していた。南西部の農耕体系形成段階にあったと考えられる。集落は小規模で洞窟や岩陰に形成されることが多い。主要な文化要素にはバスケット,サンダル,貝製ビーズ,抉入り尖頭器,馬蹄形メタテ(石皿),石製パイプ,イトラン繊維製の衣類などがある。Ⅲ期(400-700)に入ると,農耕体系が確立され,マメ類も栽培された。集落遺跡も大規模化し,地下式の宗教的建造物(キバkiva)を有する集合住宅形式の竪穴住居群が現れる。南方モゴヨン文化からの影響をうけて土器製作されはじめ,長方形のメタテが使用された。弓矢の発達,磨製石斧の製作,綿布の使用,シチメンチョウの飼育などが新要素として加わった。この時期の代表的な集落址はシャビケシュチェShabik'eshchee遺跡(ニューメキシコ州北西部)である。ここでは18の竪穴住居とキバ,ごみ捨て場,貯蔵穴が確認された。住居配置には規則性はみられない。ビーズなどの副葬品をともなう屈葬位の埋葬人骨も発掘されている。
プエブロ文化
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バスケットメーカー文化」の意味・わかりやすい解説

バスケットメーカー文化
ばすけっとめーかーぶんか
Basket Maker

北アメリカ南西部の北部地方、アナサジ亜領域(現在のニュー・メキシコ、アリゾナ両州の北部、およびコロラド、ユタ両州の南部地方)の先史文化。Ⅱ期(約2100~1600年前)とⅢ期(約1600~1300年前)に分けられる。北アメリカ西部のデザート文化から発展し、農耕、人口増加、定着性の増大、土器の製作に特徴づけられる。

 Ⅱ期の住居は半地下式の粘土張りの床面をもち、床には炉と貯蔵穴がある。農作物はトウモロコシ、カボチャで、馬蹄(ばてい)形の石皿状の石臼(いしうす)(メタテ)、抉入尖頭器(えぐりいりせんとうき)、石製パイプ、巻き技法による籠(かご)細工、サンダル、リュウゼツラン繊維の布、伸展葬の風習が特徴である。

 Ⅲ期には豆類が農作物に加えられ、新大陸の農耕体系が成立し、七面鳥も飼育された。集落も規模が大きくなり、地下式の宗教的建造物であるキバkivaも出現した。メタテ、弓矢、磨製有溝石斧(せきふ)などもみられる。土器は無文と白地黒色文があり、幾何学的文様が内側に施された。

[小谷凱宣]

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百科事典マイペディア 「バスケットメーカー文化」の意味・わかりやすい解説

バスケット・メーカー文化【バスケットメーカーぶんか】

北米のコロラド高原で200年―700年ごろに栄えたアメリカ・インディアンの文化。3期に分けられる。1期は狩猟を営み,2期は半猟半農で,容器,運搬用具としてバスケットを盛んに製作。主要食料はトウモロコシ,カボチャ。3期には土器が作られた。→プエブロ文化
→関連項目メサ・バーデ国立公園

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バスケットメーカー文化」の意味・わかりやすい解説

バスケット・メーカー文化
バスケット・メーカーぶんか
Basket Maker culture

北アメリカ南西部の山間部に発達した先住民族インディアンの文化。一般にアナサジ文化がこれに相当する。起源は不明。初期は洞窟に住み,狩猟と植物採集生活を営んでいたが,前期 (前 100頃~後 400) には竪穴住居を建て,とうもろこし,かぼちゃ,豆類を栽培し定住生活に入った。まだ土器はなく,煮沸,貯蔵,運搬用具として籠を多く製作,使用した。後期 (400~700) は大きな集落も形成され,貯蔵庫やキバと呼ばれる宗教儀礼を行う場所もつくられた。生活用具として,土器,投槍器,掘棒,木製棍棒頭,網,縄,袋物,サンダル,弓矢,石斧,石製パイプ,骨角器,装身具などがあり,前期にはなかった土器が伝わったことが特徴である。

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世界大百科事典(旧版)内のバスケットメーカー文化の言及

【編物】より

… 前2500年ごろのスイスの杭上住居址の土器にもイグサで編みかけた平織の蓆の圧痕があり,スカンジナビアの泥炭地遺跡では,イグサ,アマ,柳,アシなどのみごとな籠や蓆その他種々の編物が出土している。北アメリカ南西部のアナサジAnasaji文化の前半期(前100‐後700)はバスケット・メーカー文化とよばれ,椀や盆から各種物入れ,尖底の運搬用容器,ピッチで防水加工した液体用容器に至るさまざまなバスケット類をはじめ編袋や漁・猟用網など多種多様の優れた編物細工で有名である。インドではモヘンジョ・ダロに,中国では仰韶文化の彩陶の底部に蓆の圧痕をみるが,中国では後に漢代の楽浪古墳の彩篋(さいきよう)のように竹皮を編んだ籃胎に漆を塗って彩色した優品が作られるに至る。…

【メサ・バーデ国立公園】より

…アメリカ合衆国,コロラド州南西端に位置し,1906年国立公園となった。48ヵ所ある国立公園のなかで唯一のインディアンの先史遺跡。2000年ほど前からバスケットメーカーと呼ばれる農耕民がこの地区の岩陰に住みはじめたが,5~8世紀になると丸太で組んで泥を塗る住居をつくり,弓矢を用いるようになった。8世紀から12世紀にかけてメサ台地上に弓状に家の連なる村をつくり,その近くにトウモロコシなどの畑をつくった。…

※「バスケットメーカー文化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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