フゴッペ洞窟(読み)フゴッペどうくつ

精選版 日本国語大辞典 「フゴッペ洞窟」の意味・読み・例文・類語

フゴッペ‐どうくつ【フゴッペ洞窟】

  1. 北海道後志(しりべし)支庁余市町栄町に所在する続縄文時代洞窟遺跡。約一五〇〇~一〇〇〇年前の遺跡で、多数の土器・石器・骨角器などを出土。岩壁にある漁撈・狩猟や呪術的なものを表現した彫刻が著名。国史跡

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日本歴史地名大系 「フゴッペ洞窟」の解説

フゴッペ洞窟
ふごつぺどうくつ

[現在地名]余市郡余市町栄町

縄文時代と推定される岩面刻画がみられる洞窟遺跡。洞窟は日本海に面し、海岸から約二〇〇メートル離れたまる山という標高二七・九メートルの独立丘の東側面に形成されている。岩質は新第三紀の上部集塊岩層に相当し、付近は比較的軟質の黄灰色砂質凝灰岩が発達。昭和二五年(一九五〇)八月海水浴の中学生が偶然この洞窟を発見、同二六年・同二八年の二回にわたって北海道大学の名取武光を責任者とする調査団が発掘。その結果、洞窟内には厚く遺物包含層が充満し、これに被覆された内壁に約七〇〇以上の刻画が発見され、一躍注目を浴びた。発見当時の洞口は幅一・九メートル、高さ〇・五メートル程度が開口しているだけで、洞内や前庭部ともに遺物を包含する土砂落盤物で埋没していた。発掘はこれらの堆積層を各区に区分しながら進められた。洞窟の大きさは幅約六メートル、高さ約七メートル、奥行約七メートルほどで、堆積層は貝層や灰層が互層となり、続縄文時代の後北文化の土器・石器・骨角器などが多量に出土。

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改訂新版 世界大百科事典 「フゴッペ洞窟」の意味・わかりやすい解説

フゴッペ洞窟 (フゴッペどうくつ)

北海道余市郡余市町栄町にあり,壁面に続縄文時代の彫刻がある洞窟。JR蘭島駅の西方1.5kmに位置する。洞窟は砂質凝灰岩が海食により形成されたもので,1950年に高校生によって発見された。調査は,50-53年と,71年に行われ,洞窟内の厚さ7mにおよぶ堆積層には炉跡を含み,貝層,灰層など約75層が識別された。それを除去した壁面には200個以上の,本来は赤く着色されていた彫刻が見いだされた。後北式を中心とする土器と石器,骨角器,装身具などの人工遺物のほか,鳥獣魚貝類,クルミなどの自然遺物が多量に出土している。特にマクラガイの飾玉,柱状の石斧などから,本州や樺太方面との交流がわかる。前庭部には墓があり,また土器に入れられたような状態で鹿の肩甲骨が見いだされている。彫刻は文字ではなく,手宮洞窟のものと同様,原始絵画と考えられている。洞窟の保存施設は,72年に完成し,日本最初のカプセル方式による。
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国指定史跡ガイド 「フゴッペ洞窟」の解説

フゴッペどうくつ【フゴッペ洞窟】


北海道余市郡余市町栄町の、海岸まで200mの小さな丘陵にある岩陰遺跡。およそ1500~2000年前の続縄文時代に属すると見られ、洞窟遺跡としての価値は高く、とくに壁面の各部分に多数の図像が彫りこまれているのは稀有の例であり、北方古代文化を知るうえで重要な資料となっている。洞窟は、問口約4m、高さ約5m、奥行き約5mで、内壁のあちこちに、舟、魚、海獣、4本足の動物と思われるもの、また、角や翼で仮装した人と考えられる絵などが200点以上陰刻されている。ほかに列点などの図像もあり、呪術的な性質を持つものと推定されている。洞窟内には厚さ約7mの遺物を含む地層があり、薄手式の土器、石器、骨角器等が出土している。この遺跡の第一発見者は、札幌から海水浴に来た中学生であったといわれる。郷土研究部に所属していた高校生の兄に知らせ、知られるところとなった。1951年(昭和26)と1953年(昭和28)に正式な発掘調査が行われ、同年、国指定史跡となった。1972年(昭和47)から壁面彫刻は、カプセル方式の施設によって保護・展示され、一般に公開されている。JR函館本線余市駅から中央バス「フゴッペ洞窟前」下車、徒歩すぐ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フゴッペ洞窟」の意味・わかりやすい解説

フゴッペ洞窟
ふごっぺどうくつ

北海道後志(しりべし)総合振興局管内の余市(よいち)町丸山に所在し、内部の広さは約42平方メートルの洞窟遺跡。1950年(昭和25)に奥壁に彫刻があることが発見され、1951年と1953年に調査が行われた。洞窟の形成年代は後北(こうほく)式土器時代(約1000~1500年前)であるといわれており、岩壁画は洞窟に遺跡と遺物を残した「後北式土器人」によって彫刻されたといわれている。なお岩壁画については、「象徴的に表現された文字以前の記号に類した原始絵画であって、未開社会の漁・狩猟生活や呪術(じゅじゅつ)に関係がある」とされ、彫刻は人像、動物の仮装した人像、その他経済生活あるいは呪術的演技と関係あるものなどに区分されている。1953年、国の史跡に指定された。

[大場利夫]

『名取武光著『フゴッペ洞窟』(1970・ニュー・サイエンス社)』

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百科事典マイペディア 「フゴッペ洞窟」の意味・わかりやすい解説

フゴッペ洞窟【フゴッペどうくつ】

北海道余市町にある洞窟(史跡)。奥行5m,幅4m,高さ5m。壁面に原始的な図像の彫刻がある。洞窟内に厚さ約7mの遺物包含層があり,続縄文時代の後北式土器が出土。
→関連項目手宮洞窟

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