日本大百科全書(ニッポニカ) 「メラノフログ石」の意味・わかりやすい解説
メラノフログ石
めらのふろぐせき
melanophlogite
二酸化ケイ素(SiO2)を主体とするクラスレイト化合物(包接化合物)の鉱物。メラノフロジャイトともいう。2010年(平成22)に発見された新鉱物千葉石(ちばいし)は2014年に発見された房総石(ぼうそういし)と内容物の異なる別のSiO2を包接宿主とした包接鉱物である。メラノフログ石は、1876年フォン・ラソールArnold von Lasaulx(1839―1886)によってシチリア島ラカルムートRacalmutoの硫黄(いおう)鉱床から記載された二酸化ケイ素の鉱物で、焔(ほのお)phlogによって黒色melano化するという特性から命名された。
1963年スキナーBrian John Skinner(1928― )とアップルマンDaniel E. Appleman(1931―1998)はこれをSiO2の一等軸変態としてその結晶学的特徴を記載したが、1965年カムWalter Barclay Kamb(1931―2011)はこれが鉱物としては未知であったクラスレイト化合物(包接化合物と訳されている)で、包接成分が必須(ひっす)成分であることを確認した。1971年チェコの変成層状マンガン鉱床中から包接成分の量が原産地のものよりやや少ないものが記載され、翌1972年アメリカのカリフォルニア州より正方晶系のものが炭酸塩鉱物を含む蛇紋(じゃもん)岩体から発見され、正方晶系に属することが明らかにされた。
その後、包接成分内容に多少の差異はあるものの、低温変態で転移点が約40℃、等軸相は高温相であることが確認された。低温相をメラノフログ石、高温相をβメラノフログ石とよんでいる。
[加藤 昭 2018年10月19日]