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1790年、国際統一単位制度を設けようというフランス国民議会の決議により、パリ科学学士院が測量した地球子午線の長さに基づいてつくられた標準尺。この製作は二段階に分かれる。1799年、6か年を要した子午線測量の結果に基づいて、純白金製の板状原器がつくられ、これが共和国文書保管所Archives de Républiqueに保管された。このためこの原器をメートル・デ・ザルシーブMètre des Archivesつまり「文書保管所の原器」とよぶ。
その後1870年フランスの呼びかけによって開かれた国際会議は、この原器を基礎にして新しいメートル原器をつくることを決議し、さらに1872年の会議で原器の材料、形状などを決めた。この結果1889年に31本の原器が完成し、このうちNo.6というのが文書保管所の原器と一致したので、これが国際メートル原器とされた。他の原器はメートル条約加盟国に配られたが、このうちNo.22が日本の原器となった。
原器の材料は白金90%、イリジウム10%の合金で、X形の断面をもち、全長102センチメートル、中立面の両端付近に3本の目盛り線をもち、その中央線間の長さでメートルを示す。1960年、メートルが光の波長で定義されて、第一次標準の地位を譲った。日本のメートル原器は、2012年に重要文化財に指定された。
[小泉袈裟勝・今井秀孝]
メートル法の長さの旧標準器。メートル法を国際化のために1870年と72年に開かれた国際メートル委員会の決議に基づいて79年に製作され,89年の第1回国際度量衡総会で長さの国際原器として承認されたものさしである。耐食性と堅牢性をもたせるために10%のイリジウムを含む白金イリジウム合金で作られた,長さが1020mm,高さと幅がともに20mmの棒状の線度器で,その断面は剛直性,温度順応性,経済性の追究からX字に近いH形をしている。その形状を考案者にちなんでトレスカTreskaの断面という。棒の中立面の両端近くに1対の小判形の研磨面があり,おのおのに長さを定めるための標線が3本ずつ刻まれている。この棒を定められた条件を満たすように置いたとき,各中央の標線の間の距離が,氷の溶けつつある温度で1mであると定義されていた。この原器による複製原器の器差づけ精度は1×10⁻7程度であり,科学,技術の要求する精度に達しなくなったため,1960年の国際度量衡総会はメートル原器に基づくメートルの定義を廃止し,光の波長による定義を採用した。このためメートル原器は長さの標準器ではなくなったが,従来どおり国際度量衡局に保管されている。
執筆者:三宅 史
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