ラセイタソウ(読み)らせいたそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラセイタソウ」の意味・わかりやすい解説

ラセイタソウ
らせいたそう
[学] Boehmeria splitgerbera Koidz.
Boehmeria biloba Wedd.

イラクサ科(APG分類:イラクサ科)の多年草。厚手でごわごわして、粗い毛を密生する葉の質感をポルトガル語でラセイタraxetaとよぶ羅紗(らしゃ)に似た毛織物に例えたことからこの名がついた。このラセイタに対してかつて羅背板などの漢字があてられたことから、羅背板草などと漢字表記されることもあるが、この漢字表記そのものにはあまり意味はない。茎は固まって出て高さ30~70センチメートルとなり、硬い。葉は対生して茎の上部に集まり、柄(え)があってゆがんだ楕円(だえん)形。左右非対称でしばしば片側に小さな切れ込みが入り、縁(へり)には細かな円鋸歯(きょし)があり、葉脈は表面でへこんで細かな網目をつくる。花序葉腋(ようえき)につき、穂状で雌雄別となり、下部の葉腋に雄花序、上部の葉腋に雌花序がつく。本種は二倍体で有性生殖を行う点で日本産のヤブマオ属のなかでは特異な存在である。北海道南部と本州東部(西限は和歌山県潮岬(しおのみさき))の海岸岩場に生育し、日本特産である。本州の山口県と四国、九州と徳之島(とくのしま)以北の南西諸島の海岸に生えるニオウヤブマオ(仁王藪真苧)B. holosericea Blume(B. grandissima Nakai)は有性生殖を行う点で本種に似るが、全体に大きくて葉の鋸歯が粗く、雄花序が分枝して円錐(えんすい)状となる。なお、八重山(やえやま)諸島与那国(よなぐに)島、石垣島)の海岸にはヤエヤマラセイタソウB. yaeyamensis Hatus.がまれに生えるが、これはラセイタソウよりもヤブマオに近いものである。

[米倉浩司 2019年12月13日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラセイタソウ」の意味・わかりやすい解説

ラセイタソウ
Boehmeria biloba

イラクサ科の多年草。北海道南部から本州の太平洋岸に分布し,海岸の岩の間などに生える。茎は群がって生じ,高さ 50cm前後になり,4本の稜があって断面は四角形をなす。初めは毛を密生するが,のちに落ちる。葉は対生し広卵形で質が厚く,先は鋭頭または2~3片に浅裂し,鈍鋸歯がある。7~10月に,葉腋から穂状の花をつける。雌雄同株で,雄花は茎の下方につき穂状または円錐状で,黄白色。雌花は上部について淡緑色,球状に集る。果実は細い楔形,花被には短毛がある。和名は,葉の表面がラシャの一種の羅背板 (らせいた) raxetaに似ているためという。

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