ラバト(読み)らばと(英語表記)Rabat

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラバト」の意味・わかりやすい解説

ラバト
Rabat

モロッコの首都。ラバト県を形成する。カサブランカの北東,道路で 92km,大西洋沿岸のブレグレグ川河口左岸に位置し,右岸サレと対する。住民の大半はイスラム教徒で,ユダヤ人やヨーロッパ人も居住する。この地には古代ローマの植民都市サラ・コロニアがあったが,サレはローマにとって異端であったベルベル人を住まわせるために,正統イスラムのベルベル人によって 10世紀に建設された。12世紀,対スペイン戦争時,ムワッヒド朝が古代のサラの北方,サレの対岸軍隊の野営地(リバート)を設置,のちその地をリバート・アル・ファトヒ(勝利の野営地)と呼称したことから今日の地名が生じた。17世紀にはスペインを追われたムーア人の難民が来住。1912年からのフランス保護領時代に行政上の首都として発達。1956年のモロッコ王国独立後,サレとともにその首都となった。近代的な織物工業が行なわれ,絨毯,毛布を産する。農業も活発で野菜や果実を輸出している。そのほか煉瓦,石綿の生産でも知られる。北部の海岸近くに城壁で囲まれた旧市街があり,その南側にはフランス保護領時代に建築された近代的な新市街が広がる。カスバ・デ・ウダヤの門,ハサンの塔(→ハサン・モスク),スルタン宮殿など壮麗な建造物が多く,ムハンマド5世大学(1957),音楽学校などがある。カサブランカ,タンジールなどと鉄道,道路で結ばれ,国際空港がある。2012年,世界遺産文化遺産に登録された。人口 62万1480(2004)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラバト」の意味・わかりやすい解説

ラバト
らばと
Rabat

北アフリカ、モロッコの首都。同国北西部、大西洋岸のブー・レグレグ川河口左岸に位置する。都市圏の人口138万5872(1994)、市域の人口57万8644(2014推計)。12世紀ベルベル人のイスラム国家ムワッヒド朝により建設された。ラバトとは兵営を意味し、当初は軍事拠点であった。その後一時衰退したが、1660年アラウィ朝の王都として再興された。モロッコの南北を扼(やく)する要地であることから、1912年フランス保護領の政庁が置かれ、統監のリヨテ将軍により旧都の南にヨーロッパ風市街がつくられた。王宮があり、政府の省庁外国公館が集中し、国の政治、外交の中心都市で、独立後人口が急増した。新市街には、ビルや南欧風住宅が並び、公園や並木道も整備され、美しい都市景観をみせている。ムハンマド5世通りに沿って官庁、議会、オフィス、銀行などがあり、中心地域となっている。その南西には王宮、大学がある。市北部の海に臨む段丘上には、城壁に囲まれたアラブ風の旧市街メディナがあり、ハッサン・モスクの大尖塔(せんとう)、ウダイヤのカスバ、博物館、ムハンマド5世廟(びょう)など名所が多い。川を挟み対岸には古都サレがあり、ラバトと一体化している。工業では繊維工業のほか伝統工芸も盛んである。国際空港が近く鉄道、道路の結節点で、物資の集散地でもある。

[藤井宏志]

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