アディポネクチン(英語表記)adiponectin

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

生体の脂肪細胞から分泌される生理活性物質の一つ。1996年(平成8)に大阪大学医学部教授であった松澤佑次(まつざわゆうじ)(1941― )が発見。その後、東京大学の門脇孝(かどわきたかし)(1952― )らの研究チームが、マウスを使った実験により脂肪細胞が多様な生理活性物質を分泌することを解明し、アディポネクチンは善玉ホルモンの一つとされた。実験では、脂肪分の多い食事を摂取させて肥満となり、さらに糖尿病を発症したマウスにアディポネクチン類似物質を投与。その結果、血糖値や中性脂肪の値が減少した。マウスにはいっさい食事制限をさせず、高脂肪食とアディポネクチン類似物質を与え続け、体重が減らない状態のまま数値を下げることができた。

 ヒトの場合も、肥満などにより体内の脂肪バランスが乱れるとアディポネクチンの分泌が減り、悪玉の生理活性物質が多く分泌されるようになることがわかっている。さらに、内臓脂肪の蓄積を伴うメタボリック症候群により、糖尿病や脳卒中(脳出血、脳梗塞(こうそく))、心筋梗塞、高脂血症などの生活習慣病がもたらされ、肝臓病やアルツハイマー病、癌(がん)に罹患(りかん)する可能性が高くなる。アディポネクチンは生活習慣病や癌の予防および症状の改善に効果を発揮すると考えられており、運動や食事制限によってこれを増やすことで、生活習慣病を改善することができる。

 また、100歳を超える長寿の人の血中にアディポネクチンが多いという研究結果も報告されており、長命にかかわることも示唆されている。

[編集部 2016年6月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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