アナドリ(その他表記)Bulwer's petrel
Bulweria bulwerii

改訂新版 世界大百科事典 「アナドリ」の意味・わかりやすい解説

アナドリ
Bulwer's petrel
Bulweria bulwerii

ミズナギドリ目ミズナギドリ科の鳥。亜熱帯の海洋にすむ小型の海鳥で,海に潜ることは少なく,夜間,海の表面に浮遊する動物プランクトン,小型のイカ類をくちばしでつまみとって食べる。羽色は全体に黒褐色,尾はくさび形で長い。全長28cm。細長い翼をもち,風があればときどきはばたくだけで,翼を広げ,波の間を海面すれすれに飛ぶ。風がないときには不規則にはばたいて前進する。繁殖は陸地から離れた小島で行い,岩の割れ目や隙間,地面に掘られた穴などの中に,白色無斑の卵を一つ産む。雌雄交替で抱卵し,卵は1ヵ月半で孵化(ふか)し,雛は約2ヵ月養育されて巣立つ。繁殖地は大西洋東部の島嶼(とうしよ),中部太平洋ハワイ諸島フェニックス諸島マルケサス諸島,中国南部沿岸の島,日本では小笠原諸島硫黄列島を含む),伊豆諸島の一部,南西諸島南部,尖閣諸島などである。この種は数が比較的少なく,目につきにくいので,生態は十分にわかっていない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アナドリ」の意味・わかりやすい解説

アナドリ
Bulweria bulwerii; Bulwer's petrel

ミズナギドリ目ミズナギドリ科。繁殖時以外は沖合いの海上で生活する海鳥。類縁の近いのはシロハラミズナギドリ属 Pterodroma とずっと考えられていたが,遺伝子を調べてクロミズナギドリ属 Procellaria だとわかった。全長 25~29cm。全身黒褐色で,雨覆羽の先端部はやや明色。尾の形は先のとがった楔形である。繁殖地は太平洋では中国東南部からハワイ諸島にかけての島嶼と,大西洋では北アフリカ北西海域の島嶼で,繁殖後はおもに世界中の熱帯海域に分散する。おもに夜間に水面近くにいる小魚やイカ,プランクトンを飛びながらとる。日本では小笠原諸島硫黄列島などで繁殖している。岩の割れ目やくぼみ,穴の内の棚部などに営巣する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナドリ」の意味・わかりやすい解説

アナドリ
あなどり / 穴鳥
Bulwer's petrel
[学] Bulweria bulwerii

鳥綱ミズナギドリ目ミズナギドリ科の海鳥。小形の外洋性種で、世界の暖海域にすむ。全長約27センチメートル。全身黒褐色で、尾は長くくさび形。細く長い翼を不規則に羽ばたき、海面近くを飛ぶ。海の表面に浮遊する動物プランクトンや小形のイカを嘴(くちばし)でつまみとって食べる。陸から離れた小島の岩の割れ目やすきま、あるいは地面に掘られた穴を巣にして白色無斑(むはん)の卵をただ一つ産む。雄と雌が交代で1か月半抱卵、その後2か月ほど給餌(きゅうじ)する。日本では小笠原(おがさわら)諸島や伊豆諸島、琉球(りゅうきゅう)諸島で繁殖しているが、数は多くない。

[長谷川博]

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