アバス(読み)あばす(英語表記)Ferhat Abbas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アバス」の意味・わかりやすい解説

アバス(Ferhat Abbas)
あばす
Ferhat Abbas
(1899―1985)

アルジェリアの政治家。独立および民族解放運動の指導者。コンスタンティーヌ県出身。1931年アルジェ大学薬学部卒業。この間、アルジェリア回教徒学生同盟の指導者として活躍。1938年アルジェリア人民同盟を結成。1946年アルジェリア宣言民主同盟を結成し、フランスとの協力による自治共和国の建設を主張。同年フランス国民議会議員に選出される。しかし1955年には、従来の穏健な自治共和国構想を捨てアルジェリア民族解放戦線FLN)に合流。1956年ベンベラらFLN首脳がフランス軍に逮捕されるとその後を継ぎ、1958年カイロでアルジェリア共和国臨時政府(GPRA)を樹立し、1961年8月まで初代首相を務めた。独立(1962年7月)後は初代国民議会議長に就任、1963年8月ベンベラと対立し自宅拘禁された。1965年ブーメディエンクーデターにより釈放され政界から引退。著書に『若きアルジェリア人』Le Jeune Algérien、『植民地の夜』La Nuit Colonialeがある。

[福田邦夫]


アバス(通信社)
あばす
Havas

フランスのAFP通信社の前身正称アバス通信社Agence Havas。1835年シャルル・アバスがパリに設立した世界最古の通信社。当初は新聞の翻訳や商況ニュースの配信から出発した。腕木信号機や伝書鳩(でんしょばと)を利用して速報に努め、電信時代に入ってから近代的通信社に発展、19世紀後半から20世紀前半にかけて世界的に活動した。1940年フランスの対ドイツ降伏で解散、1944年フランスの解放とともにAFPに改組された。

[伊藤力司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アバス」の意味・わかりやすい解説

アバス
Havas

フランスの国際通信社AFPの前身で,世界最初の近代的通信社。ハンガリー系のフランス人シャルル・アバスが 1825年パリに外国の新聞を訳して購読者に配布する通信事務所を開設したのが最初。それが発展し,35年アバス通信社になり,79年株式会社組織になった。第1次世界大戦頃までは,イギリスロイター,ドイツのウォルフと並んで世界の三大通信社と呼ばれ,敗戦によるウォルフの没落後も新興のアメリカのAPUPを加えて,世界の代表的通信社の位置を保ち続けた。しかし 1940年ナチス・ドイツにフランスが降伏したとき,アバスは消滅。職員や伝統は,44年発足の AFPに引継がれた。

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