アリア(英語表記)aria[イタリア]

精選版 日本国語大辞典 「アリア」の意味・読み・例文・類語

アリア

〘名〙 (aria)
オペラオラトリオカンタータなどの中の、旋律的な独唱部分。多く、器楽の伴奏で歌われる。せりふの朗唱であるレシタチーブ(叙唱)に対するもの。詠唱。
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉歌女「ヂドは今主なる単吟(アリア)に入りぬ」
② 叙情的、旋律的な器楽曲や楽章。「G線上のアリア」

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デジタル大辞泉 「アリア」の意味・読み・例文・類語

アリア(〈イタリア〉aria)

オペラオラトリオカンタータなどで歌われる旋律的な魅力に富んだ独唱曲。詠唱。
歌謡的、叙情的な器楽曲。「G線上のアリア

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改訂新版 世界大百科事典 「アリア」の意味・わかりやすい解説

アリア
aria[イタリア]

華やかな演奏効果をめざして作曲された声楽曲,またはその部分。17世紀以降,オペラ,オラトリオ,カンタータなどの劇音楽の発展に伴って,アリアはその中で重要な地位を占めるようになった。これらの劇音楽では,物語の発展は語る口調に近いレチタティーボに主としてゆだねられ,アリアはもっぱら音楽的興味を前面に押し出した〈聞かせどころ〉として機能した。アリアが歌われる間,物語の発展は原則として停止し,そのことを通じてアリアは独自の完結した音楽的形式を展開し,種々の声楽的技巧を盛りこむことができた。歴史的に見ると,初期の有節形式のアリア,固執低音にもとづくアリア,ロンド形式のアリア等をへて,18世紀には声のソナタあるいはコンチェルトになぞらえられるダ・カーポ・アリア(中間部を挟んで主部が反復される大規模で技巧的なアリア)の形式が成立する。また声の表情や用いられる技巧の種類に従って,緩やかなテンポでたっぷりと歌うアリア・カンタービレ,急速なテンポで技巧の限りを尽くすアリア・ディ・ブラブーラなど,さまざまなジャンルが併立した。19世紀に入ると,ワーグナーのように,ドラマの自然な流れを損なうとの立場からアリアを排撃する者も現れたが,イタリア風のオペラでは引き続きアリアが重要な役割を占め,アリアなしの名場面は考えることができない。ベルディの作品では,1曲のアリアは,カバティーナと呼ばれる抒情的な部分と,カバレッタと呼ばれる劇的に高潮した部分とから成ることが多い。20世紀の作品では,一般に音楽とドラマが密着し,音楽的表現が多元的となったのに伴って,アリアは以前ほど顕著な役割を占めていない。

 語る口調に近いレチタティーボともっぱら歌唱的なアリアの中間的性格をおびるものにアリオーソがあり,しばしばレチタティーボからアリアへ推移する際に効果的に用いられる。また小規模なアリアをアリエッタと呼ぶことがある。

 アリアは,本来声楽曲の形式であるが,抒情的歌唱的な性格をもつ器楽の主題や楽章も時にアリアと呼ばれる。有名な例として,バッハの《管弦楽組曲第3番》のアリア(いわゆる《G線上のアリア》)や,同じバッハの《ゴルトベルク変奏曲》(原題《アリアと30の変奏》)の主題などがあげられる。
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百科事典マイペディア 「アリア」の意味・わかりやすい解説

アリア

器楽の伴奏をもった旋律的な独唱曲で,リートや歌曲と違って,規模が大きく,言葉の意味よりも声の技術を含めた音楽的表現に重点を置く。バロック時代のカンタータオラトリオオペラなど劇音楽の発展とともに明確な形をとりはじめ,19世紀のイタリア・オペラに一つの頂点がある。一般には語りの要素の強いレチタティーボに対比される。なお器楽曲でも,抒情的旋律的な性格の強い主題や楽章をアリアと呼ぶことがある(J.S.バッハの《管弦楽組曲第3番》のアリア,フランクのピアノ曲《前奏曲,アリアと終曲》などが有名)。→楽劇/A.スカルラッティ
→関連項目カッチーニカデンツァカバティーナレーマン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリア」の意味・わかりやすい解説

アリア
ありあ
aria イタリア語

オペラ、オラトリオ、カンタータなど、大規模で劇的な作品中の独唱歌曲。詠唱と訳される。音楽用語として現れるのは16世紀からで、本来、有節的な形式をもつ曲に対して用いられた。オペラの独唱曲を示す最初期の例はモンテベルディの『オルフェオ』(1607)第2幕冒頭にみられるが、17~18世紀には変奏曲の主題や組曲の緩徐楽章などをさすこともあった(バッハの『ゴールドベルク変奏曲』の主題や、管弦楽組曲第3番の俗称『G(ゲー)線上のアリア』はこれらの例である)。アリアは一般にレチタティーボと対をなし、歌手は後者で物語の状況を説明したあと、前者で自身の心情を吐露する。アリアの形式は17世紀中葉に定型化し、ABAの構造をもった。これをダ・カーポ・アリアda capo ariaとよぶ。18世紀にオペラが栄えたナポリでは、ベルカント唱法の発達と並行して、歌手が自身の技巧を誇示するために即興的に装飾音を加えたり、音を自由に変えて歌うようになった。ダ・カーポ形式は18世紀中葉から崩れ始め、アリアの形式は多様化する。19世紀イタリアでは、18世紀以来のコロラトゥーラを中心としたアリアが全盛期を迎えたが、やがてドイツでワーグナーの楽劇が生まれるに及んで、アリアとレチタティーボは解け合い、段落感のない無限旋律に姿を変えた。ムソルグスキー、ドビュッシー以後アリアはほとんど姿を消すことになる。

[石多正男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アリア」の意味・わかりやすい解説

アリア
Alia, Ramiz

[生]1925.10.18. シュコダル
[没]2011.10.7. ティラナ
アルバニアの政治家。大統領(在任 1991~92)。労働者の家庭に生まれた。第2次世界大戦中はパルチザンとして活動した。1943年アルバニア共産党(→アルバニア社会党)に入党,1944~48年アルバニア労働青年同盟書記長,1949年アルバニア労働党中央委員。1954年ティラナ大学を卒業。1955~58年教育文化大臣を務め,1982年に政治局員となり,人民議会幹部会議長に就任。1985年エンベル・ホッジャの死により党第一書記となり,実権を握った。純粋社会主義の堅持と鎖国政策を続けたが,1990年民主化政策に転換し,鎖国の廃止,亡命希望者の出国容認,経済改革,一党独裁の廃止,大統領制の導入などを行なった。1991年大統領に就任し,翌 1992年辞任。1994年汚職容疑で起訴され,実刑判決を受けたが翌 1995年に釈放された。1996年に大量殺人容疑で再逮捕されたが,翌 1997年政府は訴えを取り下げた。

アリア
aria

オペラ,オラトリオ,カンタータなどのなかに現れるはなやかな旋律の独唱曲をさす。 17~18世紀のイタリア・オペラの発展とともに,抒情的表現をねらったアリア・カンタービレ,技巧的なアリア・ディ・ブラブーラ,語るような口調のアリア・パルランテなど,さまざまのタイプのものが生れ,オペラの音楽的興味を独占した。グルックによるオペラ改革以降,次第にこの優先的地位を失うが,イタリアではなおプッチーニにいたるまで,アリアが重要な機能を帯びている。独立して作曲されたアリアを演奏会用アリアという。また,歌うような曲想の器楽曲も,ときにアリアと呼ばれることがある (例:『G線上のアリア』) 。

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デジタル大辞泉プラス 「アリア」の解説

アリア

NHKの子供向けテレビ番組『クインテット』(2003年放映開始)に登場するキャラクター。

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音楽用語ダス 「アリア」の解説

アリア

オペラやオラトリオのなかで歌われる、叙情的な独唱曲。

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