アプリオリ(その他表記)a priori[ラテン]

デジタル大辞泉 「アプリオリ」の意味・読み・例文・類語

ア‐プリオリ(〈ラテン〉a priori)

[名・形動]《より先なるものから、の意》中世スコラ哲学では、因果系列の原因あるいは原理から始める認識方法をいい、カント以後の近代認識論では、経験に依存せず、それに先立っていることをさす。⇔アポステリオリ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「アプリオリ」の意味・読み・例文・類語

ア‐プリオリ

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( [ラテン語] a priori 原義は「より先のものから」の意 )
  2. スコラ哲学で定義や原理から始める議論の進め方。⇔ア‐ポステリオリ
    1. [初出の実例]「物理はア、プリオリと云って先天の理とし、心理はア、ポステリオリと云って後天の理なれば」(出典:百一新論(1874)〈西周〉下)
  3. カントの認識論で、経験や事実に先立つ条件のこと。先天的。⇔ア‐ポステリオリ。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「アプリオリ」の意味・わかりやすい解説

ア・プリオリ
a priori[ラテン]

ア・ポステリオリa posterioriと対をなして,推論の二つのあり方を規定する中世スコラ哲学の用語。ア・プリオリとは〈より先なるものから〉の意味で,元来,原因から結果へ,原理から帰結へという方向をとる推論・認識を,ア・ポステリオリ(〈より後なるものから〉の意)は,その逆の方向をたどる推論・認識を意味した。神とその諸属性,理性,道徳的諸性質やそれらについての概念,判断,認識はア・プリオリと,一方,人間により近い感覚的経験的なものをもととする推論・認識はア・ポステリオリと考えられたのである。近世に入り近代科学の登場にともなって,人間の認識の基盤へのあらためての反省が盛んになるにつれて,この対概念は新たな認識論的規定をおびて登場する。ニュートン物理学の基本概念によりながら,空間時間をア・プリオリな直観形式とし,純粋悟性概念としてのカテゴリーをア・プリオリな思考形式として,両者協働のうちに数学と自然科学の学問性の根拠を求め,人間の知のあり方一般への反省の拠点たらしめたカントが,この転換にあたって決定的な役割をはたした。以来,ア・プリオリは,生得的,先天的,非経験的などの意味をおびて,論理実証主義からネオ・プラグマティズム,今日の生成文法などにまで至る議論の中で,くり返しそのあり方と有効性範囲とを問われつづけることになるのである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「アプリオリ」の意味・わかりやすい解説

ア・プリオリ

ラテン語で〈より先なるものから〉の意。ア・ポステリオリに対して,原因あるいは実体からの認識・推論をいう。伝統的に真理性が高いとされる。〈生得的〉〈先験的〉〈非(超)経験的〉といった含意を決定づけたのがカントで,空間・時間はア・プリオリな直観形式,カテゴリーはア・プリオリな思考形式とされる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

ビャンビャン麺

小麦粉を練って作った生地を、幅3センチ程度に平たくのばし、切らずに長いままゆでた麺。形はきしめんに似る。中国陝西せんせい省の料理。多く、唐辛子などの香辛料が入ったたれと、熱した香味油をからめて食べる。...

ビャンビャン麺の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android