改訂新版 世界大百科事典 「イカル」の意味・わかりやすい解説
イカル (桑)
Japanese grosbeak
Eophona personata
スズメ目アトリ科の鳥。ムクドリとほぼ同じ大きさで,全長約23cm。額,眼先,頭頂が黒く,大きい黄色のくちばしが特徴。体は全体に明るい灰色で,翼と尾は光沢のある黒色,翼には白帯があり,飛ぶときによく目だつ。比較的のっそりして,活発には活動しない。中国東北部,沿海州,朝鮮半島,日本に分布している。日本では本州以北で繁殖し,北日本のものは冬に本州中部以南に渡って過ごす。山地の落葉広葉樹林や,その二次林,林縁など,低木の入り混じった開けたところにすむ。分布はどちらかといえば局所的で,全国的にはあまり数の多い鳥ではない。1夫1妻でなわばりをもって繁殖するが,なわばり性はあまり強いものではない。低木の枝にわん形の巣をつくり,1腹3~4個の卵を産む。キョッキョッと鳴き,キーコキーヨなどと聞こえる明るいおおらかな声でさえずる。冬は小群でいることが多く,ヌルデやアカシアなどの種子をパチパチと音を立てて割っては食べている。イカルによく似ていて小型のコイカルE.migratoriaは全長約19cm。雌雄異色で雄はイカルに似ているが,体はいくぶん褐色を帯びていて,頭部は顔も黒い。雌は頭部の黒色がない。中国東北部と東部,沿海州などで繁殖し,北のものは冬に中国東部,朝鮮半島に渡る。日本では本州,九州に冬鳥として小群で現れるが,数は少ない。九州で繁殖した例がある。
執筆者:中村 登流
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報