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イペリット ypérite

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

イペリット
ypérite

化学兵器の一種。記号 HD。エチレンに塩化硫黄を作用させてつくられるびらん毒ガス。化学的には 2,2' -ジクロロジエチルスルフィドといい,化学式は (C2H4Cl)2S 。通常,無色ないし淡黄色の液体で,融点 14.4℃,水に微溶,有機溶媒に易溶。第1次世界大戦中,1917年7月にドイツ軍がベルギーのイープル付近で初めて使用したことから,フランス語でイペリットと呼ばれる。英語では,からし臭のあるところからマスタードガス mustard gasと呼ぶ。これを受けると目や皮膚がただれ,吸いこむと呼吸器官から赤血球までおかされる。第2次世界大戦で最も広範に貯蔵された。ガス兵器としては,いまでも最高の性能を有するという。

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デジタル大辞泉の解説

イペリット(〈フランス〉ypérite)

糜爛(びらん)性の毒ガスの硫化ジクロロエチルのこと。第一次大戦でドイツ軍がベルギーのイーペルで初めて使用。純粋物は無色無臭であるが、工業製品はからし臭があるのでマスタードガスともいう。化学式(C2H4Cl)2S

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百科事典マイペディアの解説

イペリット

化学式は(ClCH2CH22S。融点14.45℃,沸点216.8℃,比重1.27。そのにおいからマスタードガスと呼ぶが,純粋なものは無色無臭。
→関連項目毒ガス

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世界大百科事典 第2版の解説

イペリット【yperite】

びらん(糜爛)性の毒ガスとして知られる,塩素と硫黄を含む化合物ビス(2‐クロロエチル)スルフィド(ClCH2CH2)2Sをいう。第1次世界大戦中,ベルギーのイープルYpers付近でドイツ軍が初めて使用したことからこの名がある。また,セイヨウカラシ(マスタード)のにおいを有することからマスタードガスmustard gasともいう。融点14.45℃,沸点216.8℃の液体。純粋なものは無色でにおいもない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

イペリット
いぺりっと
yperite

ビス(2-クロロエチル)スルフィドの慣用名。純品は無色無臭であるが、工業製品は褐色でカラシ臭をもつことからマスタードガスともよばれる。
 ビス(2-ヒドロキシエチル)スルフィドに塩化水素を通ずるか、塩化硫黄(いおう)にエチレンを通ずることにより合成される。水に難溶で、有機溶媒に可溶。皮膚、内臓に対しきわめて強いびらん性をもち、その毒性は遅効的かつ持続的である。第一次世界大戦時にベルギーのイーペルでの戦闘(イーペルの戦い)中に毒ガス兵器として用いられ、この名でよばれるようになった。ほかにチオコールゴムなど有機合成材料としても用いられる。[山本 学]
『宮田親平著『毒ガスと科学者――化学兵器はいかに造られたか』(1991・光人社) ▽ルッツ・F・ハーバー著、佐藤正弥訳・井上尚英監修『魔性の煙霧――第一次世界大戦の毒ガス攻防戦史』(2001・原書房)』

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世界大百科事典内のイペリットの言及

【化学兵器】より

…またイギリス,アメリカの研究協力,スウェーデンの独自研究により新しくV剤が開発された。 皮膚剤には,第1次大戦で使用されたイペリット(HD)などがある。イペリットはからし臭をもつためマスタードガスとも呼ばれ,粘膜や皮膚を糜爛(びらん)する物質であるが,上記の毒性表現法でいうと,1500mgの吸入で肺水腫を起こし死亡する。…

※「イペリット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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