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インド舞踊 インドぶよう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

インド舞踊
インドぶよう

インドの舞踊は本来,寺院専属のデーバダーシ (神への奉仕女性) によって伝えられてきた。古典舞踊は今日バーラタ・ナーティヤムカターカリカタックマニプリの4種である。これらをはじめ,芸術舞踊のほとんどはインド舞踊,演劇の聖典とされる『ナーティヤ・シャーストラ』の理論と技術に基づいている。インドの舞踊と演劇は密接に結びついて発達してきたが,演劇的筋をもつ舞踊劇をナーティヤ nāṭya,身体動態に意味をもたない純粋舞踊をヌリッタ nṛtta,これに歌を伴った舞踊をヌリティヤ nṛtyaという。また動きの上ではターンダバ tāndavaとラースヤ lāsyaの2つに分類される。ターンダバは男性的で激しく熱烈な踊りで,シバ神の踊りなどにみられ,ラースヤは対照的に女性的で優雅,静的な踊りをさし,ビシュヌ神の妃ラクシュミーの踊りなどが知られる。これらの理論にとらわれない民俗舞踊も数多く伝わり,各地で上演されている。

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世界大百科事典 第2版の解説

インドぶよう【インド舞踊】

インドには数多くの芸術舞踊や民俗舞踊があるが,芸術舞踊といわれているもののほとんどは,《ナーティヤ・シャーストラ》の理論に基づいている。インドの舞踊は古くから今にいたるまで,音楽や文学,絵画,彫刻と密接な関係をもち,人々にたいへん愛好されてきた。モヘンジョ・ダロやハラッパーの遺跡からも,踊子と思われる像が発掘されている。また,神話の中には舞踊と関係の深い神々がおおぜいおり,《ラーマーヤナ》や《マハーバーラタ》の叙事詩の中の人物にも,舞踊に優れた者が多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

インド舞踊
いんどぶよう
indian dance

インドの舞踊というと一般には古典舞踊だけを取り上げる傾向があるが、実際インドに行ってみると、さまざまな舞踊があることがわかる。大きく分ければ、古典舞踊classical danceと、民俗舞踊country danceと、部族舞踊tribe danceの3種類である。[市川 雅・國吉和子]

古典舞踊

インドの舞踊の起源は古く、世界最古のサンスクリット演劇論書『ナーティヤ・シャーストラ』には、舞踊の物語や理論、技術について詳しく書かれている。現在も残っている古典舞踊はおよそ次の五つに分類される。ケララ州周辺の「カタカリ」、オリッサ州の「オディシ」、マニプル州の「マニプリ」、デリー周辺の「カタック」、チェンナイ(マドラス)周辺の「バーラタ・ナーティヤム」である。これらはインド最古の聖典『リグ・ベーダ』や二大民族叙事詩『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』などに題材をとっており、現在生きている人の肉体によって神話を顕現するというのが、古典舞踊のテーマである。かつて古典舞踊はすべて寺院に付属しており、寺院にはかならず特定の踊り場があったが、しだいに宗教と舞踊の関係が分離し、都会の劇場で上演されるようになってきている。テーマにもタゴールの詩などが登場するようになった。古典舞踊は舞踊の神シバや破壊の神カーリーに捧(ささ)げられることが多く、上演の際その神の紋章が舞台に掲げられる。おそらく、寺院で踊られていたことの痕跡(こんせき)であろう。
(1)カタカリ 男が演ずる演劇性の強いもので、ムードラ(手指の身ぶり)によって物語が展開される。
(2)オディシ 女1人で踊られるもので、上半身の動きが叙情的、官能的である。そのほとんどがクリシュナ神話を題材にとっている。
(3)マニプリ マニプリにもクリシュナ信仰があるが、18世紀までシバ信仰であったマニプル州の住民は、その後ビシュヌ信仰に変わった。マニプリは他の古典舞踊に比べて、東南アジア的な上半身の動きが優越している。
(4)カタック ヒンドゥー教的要素とイスラム教的要素が交じり合ったもので、上半身の動きはほとんどなく、手で語るムードラもほとんどみられない。ただ、足はもっとも激しく、やはりビシュヌ信仰がみられる。
(5)バーラタ・ナーティヤム 足の激しさと手の動きの調和がとれた女性舞踊手のソロ・ダンスで、もっとも魅力的な古典舞踊といえる。[市川 雅・國吉和子]

民俗舞踊

ヒンドゥー教の民俗儀礼や祭式と結び付いて、季節の行事にあわせて踊られるもので、ベンガル州からオリッサ州にみられる「チョウ」などはその好例である。ビハール州セライケラのチョウは春の3日間にわたる祭りで行われ、あらゆるカーストを代表する13人の信徒によって演じられる。踊り手は仮面をつけて行列をつくり、シバ神が祀(まつ)られている寺院に参入する。女性の扮装(ふんそう)をした舞踊手によって聖杯が運ばれ安置される。これは、川の氾濫(はんらん)を守るシバ神への信仰が基礎となっている土俗的な祭りで、踊りはシバ神への犠牲として捧げられる。民俗舞踊はホーリ祭、バサンタ、パンチャミその他季節の祭りにはかならず行われる。[市川 雅・國吉和子]

部族舞踊

インドで200を超えるカースト外部族の舞踊で、ヒンドゥー教にほとんど影響されず、土俗民間宗教の儀礼という形式をとった舞踊が多い。オリッサ州に住む民族コヤは大地母神を鎮魂するために踊る。女は鈴のついた杖(つえ)でリズムをとり、男たちは野牛の角(つの)を頭につけ、ドラムをたたきながら踊る、複雑な一種の渦巻状の踊りである。土着的宗教に密着したこうした舞踊がインドには数多い。[市川 雅・國吉和子]

インド舞踊家

インド古典舞踊は、20世紀になって海外にも著名となり、ウダイ・シャンカールらが欧米その他に公演活動を行い、その独得の魅力を世界に広めた。以後、シャンタ・ラオShanta Rao、ムリナリニ・サラバイMrinalini Sarabhai、インドラニ・デビIndrani Devi、クリシュナン・ナイルKrishnan Nair、ソナル・マンシンSonal Mansinghらの踊り手が続いている。[市川 雅・國吉和子]
『宮尾慈良著『アジア舞踊の人類学――ダンス・フィールド・ノート』(1987・PARCO出版局) ▽河野亮仙著『カタカリ万華鏡』(1988・平河出版社) ▽ジェラルド・ジョナス著、田中祥子・山口順子訳『世界のダンス――民族の踊り、その歴史と文化』(2000・大修館書店) ▽Kapila Vatsyayan Traditional Indian Theatre ; Multiple Streams(1984, National Book Organization, New Delhi)』

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