アメリカの有機化学者.ボストン生まれ.1936年マサチューセッツ工科大学卒業,翌年20歳で学位を取得.ハーバード大学に移り,1938年最優秀な若手研究者が選ばれるthe Society of Fellowsのメンバーに選ばれ,講師,助教授,準教授を経て,1950年教授となる.1941年に共役不飽和化合物の紫外スペクトルについての経験則を発見した.ペニシリンなど種々の抗生物質,アルカロイド,テルペノイド,フグ毒など多数の天然物の構造決定を行った.またキニーネ,バツリン,コレステロール,コルチゾン,ストリキニーネ,リセルギン,ラノステロール,レセルピン,クロロフィル,テトラサイクリン,セファロスポリンCなどの全合成を行い,この間,種々の新合成法を確立し,さらに多数の実験協力者と11年間に及ぶ研究の結果,1972年ついにビタミン B12 の全合成を完成した.この間,多くの新反応の発見とともに,光および熱反応における法則性“軌道対称性保存則”(ウッドワード-ホフマン則)をR. Hoffmann(ホフマン)とともに発見した.1964年National Medal of Science,「有機合成の技法における素晴らしい業績」に対する1965年ノーベル化学賞,そのほか多くの賞を受賞した.アメリカ科学アカデミー会員.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
アメリカの有機化学者。マサチューセッツ州ボストンに生まれる。1936年マサチューセッツ工科大学卒業、翌1937年博士号を取得。すぐにハーバード大学に移り、助手、助教授などを経て1950年に同大学教授となった。1941年、共役不飽和化合物の紫外線吸収スペクトルに関するウッドワード規則を提唱、また1965年R・ホフマン(1981年ノーベル化学賞受賞)とともに分子軌道の対称性保存則(ウッドワード‐ホフマン則)を提唱、この規則により有機化学反応の結果の予測が可能となり、有機合成化学に多大な貢献をした。ペニシリン、ストリキニーネ、テトロドトキシンなど多くの天然物質の構造決定を行い、キニーネ、クロロフィルA、ビタミンB12などの複雑な天然物の化学合成に成功した。これらの業績により、1964年にナショナルメダル(科学の各分野で優れた貢献をした者に、毎年大統領から与えられる)、1965年にノーベル化学賞を受けた。
[川野辺渉 2018年6月19日]
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