エヌマエリシュ(その他表記)Enūma eliš

デジタル大辞泉 「エヌマエリシュ」の意味・読み・例文・類語

エヌマ‐エリシュ(Enūma Elish)

バビロニア創造神話。全7章、現存するものは約1000行。原初の海を表すティアマトマルドゥクが殺害するという形で、天地創造が語られる。バビロン神殿では、マルドゥク神をたたえて新年祭で朗誦された。

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精選版 日本国語大辞典 「エヌマエリシュ」の意味・読み・例文・類語

エヌマ‐エリシュ

  1. ( Enūma Elish ) バビロニアの創造神話。全七章、現存するものは約一〇〇〇行。バビロンの神殿で、マルドゥク神をたたえて新年祭で朗誦されたとされる。

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改訂新版 世界大百科事典 「エヌマエリシュ」の意味・わかりやすい解説

エヌマ・エリシュ
Enūma eliš

バビロニアの天地創造物語。バビロンの主神マルドゥクのエサギラ神殿で,正月(現行暦の3~4月)元日から12日に行われた新年祭の4日目午後に祭儀文として奉納された。〈上では天がまだ名づけられなかったとき……〉で始まり,最初のエヌマ(とき)とエリシュ(上では)の2語をとってこう呼ばれる。原存在のアプスー(深淵淡水)とティアマト(海の塩水)が混合し,そこから神々が生まれる。陽気な若い神々の騒がしさがもとで,神々が二分して戦う。原初の旧世代はキングを,新世代はエアの子,力量あるマルドゥクを将とした。後者は直接女神ティアマトを討ち,その遺体を二分して天地を創った。彼はキングから主神権の象徴〈天命のタブレット〉を奪い最高神アヌに進呈し,キングを処刑し,その血で人間を創り,神々の夫役を肩代りさせ,神々を宇宙に分封した。神々はマルドゥクのためバビロンを造営し,マルドゥクを賛美する。この神話の機能は翌5日目に行われた王権更新祭儀を基礎づける主神権の更新であり,祭儀文はアッシリアでも使われた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エヌマエリシュ」の意味・わかりやすい解説

エヌマ・エリシュ
Enuma Elish

バビロニア=アッシリアの創世叙事詩アッカド語の冒頭2句から『エヌマ・エリシュ』 (「昔,高きところに」の意) として知られる。7枚の書板から成り,ニネベのアッシュールバニパル図書館跡出土の文献 (N版) のほか,アッシュール出土の文献 (A版) ,キシュ出土およびウルク (聖書エレク) 出土の新バビロニア時代の文献などが残存している。新年祭の4日目に詠誦され,ことほがれたという。おおよそ次のような内容をもつ。世界の初めに,淡水の神アプスと海水の女神ティアマットの交合から神々の種族が発生したが,アプスは彼の子孫がふえるにつれて,若い神々のたてる騒がしい物音に耐えられなくなり,彼らを滅ぼそうとはかった。しかしこの計画を見破った知恵と魔術の神エアはその能力を使って逆にアプスを殺し,彼に代って水の支配者となった。ティアマットはアプスの死に復讐しようとして,キングを総大将とする恐ろしい怪物の軍勢を生み出し,神々に攻撃をしかけ,一時は彼らを窮地に陥らせた。しかし神々はこの危地を脱するため,エアの息子のマルドゥク (A版はアッシュール) を王位につけ,彼をティアマットとの戦いに向かわせたところ,マルドゥクはみごとにティアマットを倒し,キングと怪物たちを捕虜にして凱旋した。そして彼はティアマットの死体を2分して,それから天地をつくり,そのあとでエアの助言に従い,捕虜にしたキングも殺して,その血から人類をつくった。

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百科事典マイペディア 「エヌマエリシュ」の意味・わかりやすい解説

エヌマ・エリシュ

古代バビロニアの宇宙創成神話。バビロンの主神マルドゥクに捧げられ,深淵の淡水アプスーと海の塩水ティアマトの混合による神々の出現,マルドゥクとティアマトを代表とする新旧両世代の神々の戦いと前者の勝利,ティアマトの遺体からの天地の開闢,キングの血からの人間の創造などを語る。

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世界大百科事典(旧版)内のエヌマエリシュの言及

【マルドゥク】より

…次のカッシート時代には,マルドゥクを〈主〉(ベール)と呼び,この呼称を人名の一部として用いることが盛んになった。またこの頃マルドゥクを主人公とした神話(《エヌマ・エリシュ》)を作ることにより,同神を神々の王としてあがめようとする試みがバビロンの神官たちにより行われたらしいことが注目される。そしてイシン第2王朝のネブカドネザル1世(在位前1125‐前1104)の時代になって初めて王碑文などで正式に〈神々の王〉と呼ばれるようになった。…

※「エヌマエリシュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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