ベトナム南部,キエンザン省にある古代遺跡。メコン川のデルタ地帯にあり,分流のバサックBassac川とシャム湾の間の平野部に位置する。マルレLouis Malleretが1942年に発見し,44年に発掘調査を行った。遺跡は低湿地にあり,北にはこの遺跡の発見の端緒となった仏像を出土したバテ山がある。3km×1.5kmの長方形をなす都市遺跡で中央長軸方向に水路があり,それに直交する4本の堀で10区画に分割されている。遺存する建造物址は煉瓦や石を材料としていて7ヵ所が調査されている。比較的よく残った遺構AやKは通常の住居や神殿等とは考え難く,その性格ははっきりしない。杭の残存から通常の住居は高床木造と推定される。出土品には装身具が多く,金やスズ製の耳飾・指輪・腕輪等や珠玉等がある。鉛製の長方形の板で長辺に耳や孔をもつものは護符または荷札と考えられる。アマラーバティー様式の青銅製仏像やビシュヌ神像,鋳出し等のブラフミー文字など全般的にインド的な要素が強い。中国的なものとしては若干の仏像や漢の夔鳳鏡(きほうきよう),方格規矩四神鏡がある。ローマの金貨も発見され,2世紀のアントニヌス・ピウス帝,マルクス・アウレリウス帝のものである。出土品と扶南の都と考えられるアンコール・ボレイへの水路の存在から,2~6世紀ころにかけての扶南の海外交易の中心となった海港都市と考えられる。ローマからインドへ,さらにインドシナ,中国へと結ばれた当時の海の貿易路の存在を直接的に物語る遺跡である。なお,マルレは調査および研究の成果を全3巻7冊の《メコン・デルタの考古学》(1959-63)にまとめている。
執筆者:重松 和男
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ベトナム南部、メコン川デルタ地帯西部にある都市遺跡。タイランド湾に臨む港町ラチジャーRachgiaの北東25キロメートルに位置する。1944年、フランス極東学院のマルレL. Malleretの発掘調査によって、オケオはおよそ2世紀より6、7世紀ごろに栄えた扶南(ふなん)国の港市の跡と考えられている。遺跡の中央を運河が貫き、扶南の都と想定されるアンコール・ボレイAngkor Borey方面へ延びている。杭上(こうじょう)家屋の木柱のほかに、金細工、ガラス器、仏像およびその鋳型などの優れた工芸品が発見されている。なかでも、中国・漢の夔鳳(きほう)鏡、方格規矩(きく)四神鏡の破片、ブラフミー文字の印章、荷札または護符の一種とみられる方形耳付き錫(すず)製小板、152年の紀年のあるローマ皇帝アントニウス・ピウスの像と銘のある金貨、南インドのアマラバティ様式およびガンダーラ様式の仏像、中国・南北朝の影響を示す青銅仏の出土は貴重である。これらの出土品は、オケオが当時、ローマや中国との交渉の一拠点であり、インド系移民ないし商人の活動の場であったことを物語っている。
[青柳洋治]
『岡崎敬著『民族文化と東西文化の交流――石寨山とオケオ遺跡』(『世界考古学大系8 南アジア』所収・1966・平凡社)』
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南ベトナム南西部にある扶南(ふなん)の外港。東西交易の中継港として2世紀から7世紀まで繁栄した。後漢の鏡やインド製の青銅仏像,ローマ帝国の2世紀の金貨などが出土。1942年その港跡が発見され,44年に発掘調査が行われた。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…次いで持梨陁跋摩(シュリーンドラバルマン)が中国の宋の文帝治下(424‐453)に遣使し,僑陳如闍耶跋摩(カウンディンヤ・ジャヤバルマン)が484年から4回にわたり中国へ使節を派遣し,安南将軍扶南王に列せられた。 ここまでの扶南の政治展開を考古・出土資料の範囲から見るならば,オケオとその付近から,ローマの金貨2個(152年と156年のもの),大小の銀貨,多数の装身具類,梵語銘入り護符,ヒンドゥー教神像彫刻類,碑刻文など,インド系の出土品が数多く発見されている。扶南の外港オケオはカンボジア国境に近いベトナムのラチジャー海岸から内陸へ25km入った地点にある。…
…【高谷 好一】
[メコン・デルタの開拓史]
メコン川は自然堤防を発達させる支流が少なく,このためデルタの大部分は低湿地に覆われ,長く農業的開拓を遅らせてきた。紀元2~3世紀にデルタ南部のカマウ半島西岸にあった国際貿易港オケオでは,扶南の首都アンコール・ボレイに結ぶ総延長数百kmの運河が発見されているが,農業水利のものとは考えにくい。おそらく17世紀以前には,バサック川などメコン下流の自然堤防上に拠ったクメール人によって,はんらん原に乾季稲や浮稲がわずかに栽培されていた程度であったろう。…
※「オケオ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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