カウナス(英語表記)Kaunas

デジタル大辞泉 「カウナス」の意味・読み・例文・類語

カウナス(Kaunas)

リトアニア中央部にある同国第2の都市。ネムナス川とネリス川の合流点に位置する。11世紀以前に創設され、交易の要地として発展。15世紀にハンザ同盟に加わり、17世紀から18世紀にかけてロシアスウェーデンの侵攻を受けた。19世紀に鉄道が開通して諸工業が盛んになり、旧ソ連併合以前は臨時首都が置かれた。13世紀から17世紀にかけて建造されたカウナス城カウナス大聖堂、「白鳥」と称される18世紀のバロック様式の旧市庁舎のほか、ビタウタス大公教会ペルクーナスの家などの歴史的建造物が多く残る。

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改訂新版 世界大百科事典 「カウナス」の意味・わかりやすい解説

カウナス
Kaunas

バルト海に臨むリトアニア共和国中南部にある同国第2の都市。人口36万2348(2005)。1917年までコブノKovno,以後カウナスと改称。第1次,第2次の両大戦間のリトアニア独立国時代の首都(1919-40)で,ポーランド名のコブノで呼ばれることもある。カウナスは13世紀,ドイツ騎士修道会のリトアニア内奥への侵攻に対処して,ネマン川とネリス川の合流点に築かれた城郭都市で,陸路と水路要所であった。18世紀末にはオギンスキー運河が開かれ,バルト海と黒海を結ぶ交易の中継地でもあった。第2次大戦後政治の中心は首都ビルニュスに移されたが,経済,文化,高等教育(研究所,大学)の分野での同都市の役割は依然として大きい。旧市街地区には中世以来の種々の様式による教会,ゴシック建築の商館〈ペルクーナス(雷神)の邸〉などの遺構が多いほか,20世紀初頭の画家兼作曲家チュルリョーニスの美術館があり,内外の観光客が絶えない。カウナスのバスケットボール・チーム〈ジャルギリス〉は世界屈指の力をもつ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カウナス」の意味・わかりやすい解説

カウナス
Kaunas

旧称コブノ Kovno。リトアニア中部の都市。首都ビリニュスに次ぐ同国第2の都市。ビリニュスの西北西約 90km,ネマン川とビリヤ (ネリス) 川の合流点にある。ネマン川沿いの低地に商業地区,台地上に住宅地区,官庁街があって,ケーブルカーがこの間を結ぶ。 1030年要塞がつくられたのが始りで,1317年市となった。 1569年にはポーランドへ,1795年にはポーランド分割によってロシアへ帰属した。 1918年リトアニアが独立したのち,古来の首都ビリニュスがポーランドに占領されたため,これに代って 40年までカウナスがリトアニアの首都となった。工業生産は,電気機器,電動機,タービン,工作機械,暖房機器,毛織物化繊食肉加工,製紙皮革,家具,工芸品などの部門が盛ん。川の合流点に残る城跡のほか,古い市庁舎 (16世紀) や聖堂などが保存されており,農業,医科,工科などの大学,軍事博物館などがある。 60年に市の上流約 10kmのネマン川にダムと水力発電所が建設された。人口 43万 3600 (1992推計) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カウナス」の意味・わかりやすい解説

カウナス
かうなす
Каунас/Kaunas

リトアニア共和国第二の都市。人口37万8943(2001)。ネマン川とネリス川の合流点に位置し、市の中心部はネマン川右岸に発達している。11世紀初頭に記録に登場する古い都市で、14~15世紀初頭にはリトアニアとチュートン騎士団との闘争で戦略上重要な役割を果たした。侵略と破壊が繰り返されたが、15世紀に自治制を確立し、手工業と商業の中心地として発展した。古くから皮革工業、絹織物工業が盛んで、第二次世界大戦後、機械金属工業(タービン、モーター、無線機、暖房用ボイラー)、軽工業(絹織物、毛織物、縫製、合成ゴム、木製品)、食品工業(食肉、酪製品)など30以上の大工場が新たに建設された。鉄道、幹線道路が分岐する交通上の要衝でもある。町並みはリトアニア・ゴシックの美しい歴史的建造物が多く、13~17世紀に建設された城や、ビタウタス教会(1400)などみるべきものが多い。

[山本 茂]

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百科事典マイペディア 「カウナス」の意味・わかりやすい解説

カウナス

リトアニア共和国の都市。旧称コブノ。ネマン川に面する河港をもち,1919年―1940年リトアニア独立時の政府所在地。第2次大戦の激戦地で,ユダヤ系市民の多くはナチスによって虐殺された。当時日本領事館副領事だった杉原千畝がユダヤ人6000人に脱出のための査証を与えたことでも知られる。農機具,木材,製紙,紡績,食品加工などの工業が行われる。31万5933人(2011)。

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