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カンタベリー物語 カンタベリーものがたりThe Canterbury Tales

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

カンタベリー物語
カンタベリーものがたり
The Canterbury Tales

イギリスの詩人 G.チョーサーの最後の作品で最高傑作。 1387年頃~1400年に執筆。1万7千余行の韻文と長い散文から成る 24編の物語集で未完。ロンドン郊外サザックの宿屋に集ったカンタベリー詣での一行 30人ほどが,旅のつれづれの慰めにかわるがわる話をするという,中世文学によくある枠組みをもっているが,各人物の個性化と作者の鋭い社会感覚は,これをいわば 14世紀イギリスの「人間喜劇」にしている。騎士道的な宮廷ロマンス (騎士,法律家などの話) から卑猥なファブリオー (粉屋,農場の親方などの話) ,民話 (バースの女房の話) から説教 (牧師の話) まで,11を数える中世の文学形式を網羅して,さながら中世文学のアンソロジーの観がある。なかでも枠を設定する「プロローグ」は当時の生活を背景に登場する人物群像を的確に活写してあますところのない絶品である。

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百科事典マイペディアの解説

カンタベリー物語【カンタベリーものがたり】

チョーサー作の物語。《Canterbury Tales》。1393年―1400年ごろの執筆。中世文学最大の傑作の一つ。カンタベリー聖堂へ巡礼に行く29人の一団が,道中の退屈しのぎに順番に物語をするという形式。

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デジタル大辞泉プラスの解説

カンタベリー物語

1972年製作のイタリア映画。原題《The Canterbury Tales》。中世イギリスの詩人チョーサーの同名物語集をオムニバス形式で映画化。監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ、出演:ジョゼフィン・チャップリン、フランコ・チッティ、ニネット・ダボリ、ピエル・パオロ・パゾリーニほか。第22回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。

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世界大百科事典 第2版の解説

カンタベリーものがたり【カンタベリー物語 The Canterbury Tales】

イギリスの詩人チョーサーの最大傑作。1387?‐1400年執筆,未完。ほとんど全編,英雄対韻句という弱強5詩脚の対句形式によって書かれている。カンタベリー大聖堂にもうでる巡礼たちが,旅の行き帰りそれぞれ語る物語,序歌を含めて24編を集成した物語集で,巡礼の集団には騎士,粉屋,農場の親方兼大工,料理人,法律家,托鉢僧,刑吏召喚人,機織の女,学僧,商人,郷士,医者,免罪符売り,尼僧院長,修道僧,神父といった社会各層の人びとに加えて,作者自身も登場する。

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大辞林 第三版の解説

カンタベリーものがたり【カンタベリー物語】

チョーサーの叙事詩。1387~1400年作。カンタベリー大聖堂に詣でる様々な階層の巡礼者たちを語り手として登場させ、一編のドラマとしたもの。二四の物語から成る。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

カンタベリー物語
かんたべりーものがたり
The Canterbury Tales

14世紀最大のイギリス詩人ジェフリー・チョーサーの物語詩集で、中世ヨーロッパ文学の一つの頂点を示す。カンタベリー大聖堂に詣(もう)でる巡礼たちが語る物語の集成で、作者は最初120編余の大作を意図したと思われるが、実際は、未完の作品を含めて、24編が残るだけ。作者は結尾に中世文学特有の「パリノード」(取消しの文)を付して、この物語集をいちおう完結させている。巡礼の集団には、国王と乞食(こじき)を除いて、社会各層の多種多様な人物、たとえば、騎士、粉屋、農場の親方(兼大工)、料理人、法律家、托鉢僧(たくはつそう)、召喚吏、学僧、商人、郷士、医者、免罪符売り、尼僧院長、修道僧、神父などが登場、作者自身も語り手の一人として登場する。物語の内容は、ロマンス、説教文学、滑稽譚(こっけいたん)(ファブリオー)、聖者伝そのほか、当時ヨーロッパに流行した文芸のあらゆるジャンルにわたる。しかし、この作品は単なる物語の寄せ集めではない。たとえば第1話「騎士の物語」は宮廷風恋愛の荘重・典雅なロマンスであるが、第2話の滑稽譚「粉屋の物語」は第1話のパロディーになっている。このように物語は互いに関連しながら進行し、従来の「枠物語」とは異なる構成をもち、個々の語り手には、それぞれの身分、境遇、趣味、性格にふさわしい物語が与えられる。作者は、しばしば鋭い風刺を発揮するが、総じて寛容とユーモアに満ち、人間の思想や行動の価値を謙虚に受け止めている。結尾の「取消しの文」は、「コンテンプトゥス・ムンディ」、すなわち作者の「現世否定」の思想を示すが、作品の世界では、むしろ現世に深い歓(よろこ)びを感じていた詩人の人間性が躍如としている。聖・俗二つの世界をそのまま容認する作者の精神が、中世の「人間喜劇」とも称すべきこの作品を創造しえたといえよう。[安東伸介]
『西脇順三郎訳『カンタベリ物語』(『世界文学大系8』所収・1961・筑摩書房)』

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世界大百科事典内のカンタベリー物語の言及

【チョーサー】より

…《トロイラスとクリセーデ》(1385ごろ完成)は,ボッカッチョの《フィロストラート(恋の虜(とりこ))》を素材とした作品で,愛の熱情をめぐる歓喜と苦悩,愛における時間と永遠の主題を追求した,中世におけるロマンスの最高傑作の一つである。さらに,恋に殉じた女性たちの列伝《善女物語》(未完,1385‐86ごろ執筆)を経て,中世物語文学の集大成とも称すべき大作《カンタベリー物語》(1387?‐1400執筆)を書くに至り,中世ヨーロッパ文学における一つの巨大な記念碑を創造した。チョーサーは帝王韻詩rhyme royalや英雄対韻句heroic coupletを英詩に導入し,ロンドン方言を用いて文学標準語の確立に寄与した。…

【デカメロン】より

… この《デカメロン》は,手書きとして,イタリア中にひろがり,フランコ・サッケッティ,ロル・ジョバンニ・フィオレンティーノ,マスッチョ・サレルニターノ,マッテオ・バンデロのようなルネサンス短編小説作家に引き継がれたが,16世紀には,教会や聖職者の神聖を冒瀆(ぼうとく)する不敬の書としてローマ教皇庁の禁書目録に加えられた。というものの,写本のままこの小説集がヨーロッパ世界にひろがって愛読された結果,イギリスではチョーサーの《カンタベリー物語》,フランスではナバール王妃マルグリットの《エプタメロン》などが生まれ,近代文学とつながっていった。 日本では明治時代に尾崎紅葉がこの著の一編を翻案して《鷹料理》を著したほか,二,三の翻案が見られたが,肝心の艶笑談は紹介されたこともなかった。…

※「カンタベリー物語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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