ガリウム(英語表記)gallium

翻訳|gallium

精選版 日本国語大辞典 「ガリウム」の意味・読み・例文・類語

ガリウム

〘名〙 (gallium)⸨ガリューム⸩ 土類金属元素の一つ。記号 Ga 原子番号三一。原子量六九・七二三。青みがかった白色、斜方晶系の柔らかい金属。融点は摂氏二九・七八度と低く、気温が高いと液状になる。高温温度計、合金元素などに用いられる。〔稿本化学語彙(1900)〕

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デジタル大辞泉 「ガリウム」の意味・読み・例文・類語

ガリウム(gallium)

硼素元素の一。単体は青みを帯びた軟らかい金属で、アルミニウムに似た性質をもつ。融点がセ氏約30度と低く、気温が高いと液体になりやすい。元素記号Ga 原子番号31。原子量69.72。

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改訂新版 世界大百科事典 「ガリウム」の意味・わかりやすい解説

ガリウム
gallium

周期表ⅢB族に属するアルミニウムと同族の金属元素。天然にはつねに亜鉛,鉛,ゲルマニウムまたはアルミニウムに伴って極少量(0.002%以下)産する。1875年にフランスの化学者ボアボードランPaul Émile Lecoq de Boisbaudranが分光分析法により発見した。彼の名前をもじって,lecoq(おんどり)のラテン語gallusからの命名とも,祖国フランスのラテン名Galliaにちなんで命名されたともいわれる。これ以前1871年に,D.I.メンデレーエフ周期律からエカアルミニウムの名で周期表中の欠けた元素の存在とその性質を予言していたが,このガリウムがそれに相当し,予言した性質もガリウムの性質にきわめてよく一致することを示した。青みを帯びた白色で金属光沢をもち,斜方晶系。とくに近い距離(2.437Å)に1個の隣接原子があり,ヨウ素I2の結晶と同じ構造,空間群をもつ。金属性を有する分子結晶ともみなすことができる。このように2原子が対となる構造は液体状態でも保たれている。異方性が大きく,電気抵抗は軸方向によって大きく異なる(a軸方向17.4μΩcm,b軸方向8.1μΩcm,c軸方向54.3μΩcm)。融点と沸点との差がきわめて大きく,既知物質のうちで液体として存在しうる温度範囲が最も広い。また過冷却現象が著しい。アルミニウムよりも反応性が小さく,空気中では酸化物の被膜におおわれて腐食しない。うすい酸には徐々に溶ける。塩酸と硝酸との混合物には速やかに溶ける。Alと同じく酸化数Ⅲの化合物が安定であるが,Ga2O,GaCl2などGa(Ⅰ),Ga(Ⅱ)の化合物も少数知られている。Ga3⁺水溶液は無色である。

 金属は亜鉛,鉛の製錬のさいの副産物として回収される。またボーキサイトからアルミナを抽出する工程(バイヤー法)で,苛性ソーダ溶液中にアルミナとともに含まれてくるので,アルミナ分離後の浸出液から回収される。インジウムと同様に,金属間化合物半導体としての用途が急増している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガリウム」の意味・わかりやすい解説

ガリウム
がりうむ
gallium

周期表第13族に属する元素。1875年、フランスのボアボードランが分光分析によりピレネー産の閃(せん)亜鉛鉱中に紫色の輝線を示す新元素をみつけ、フランスのラテン名Galliaにちなんで名づけた。ロシアのメンデレーエフが1869年に予言したエカアルミニウムにあたる。分散元素で、天然に単体としては存在せず、希産ではあるが広く分布している。アルミニウム、亜鉛抽出の副産物として得られる。高純度金属は、帯融解法により精製する。軟らかい青みを帯びた白色金属で、融点が低く、液体の温度範囲が広く、固化に際して膨張する。低融点のため塵埃(じんあい)などが付着すると暗色の液体となっていることが多い。アルミニウムに似て金属は酸、水酸化アルカリ水溶液に溶ける。低温では酸化物皮膜により安定であるが、高温では酸素と反応して酸化ガリウム(Ⅲ)を生じる。酸化物は両性で酸化アルミニウムより酸性が強い。酸化数Ⅲの化合物が普通であるが、Ⅰの酸化物、ハロゲン化物も知られる。酸化数Ⅱの化合物と思われるものは、たとえばGaCl2はGaIGaIIICl4のようにⅠとⅢの共存する化合物である。金属間化合物とくにヒ素アンチモンリンとの化合物は半導体の性質があり、発光素子、ミリ波、マイクロ波の発振素子などのほか、高温での整流器、トランジスタ、太陽電池などに用いられ、酸化物はカラーテレビの緑色蛍光体として、金属は液体合金の製造に用いられる。

[守永健一・中原勝儼]


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化学辞典 第2版 「ガリウム」の解説

ガリウム
ガリウム
gallium

Ga.原子番号31の元素.電子配置1s22s22p63s23p63d104s24p1の周期表13族元素.原子量69.72.2種類の安定同位体と11種類の放射性同位体(69Ga,71Ga)が知られている.1875年P.E. Lecoq de Boisbaudranがせん亜鉛鉱の分光分析で発見し,かれの母国で鉱石の産地フランスの旧名Galliaから元素名をとった.
天然には,亜鉛鉱石中やケイ酸塩中に微量含まれている.地殻中の存在度18 ppm.塩化ガリウムの融解電解か,酸化ガリウムを水素で還元して得られる.帯青白色の軟らかい金属.斜方晶系.融点29.78 ℃,沸点2403 ℃.密度5.904 g cm-3(25 ℃),6.1 g cm-3(30 ℃,液体).空気中で安定で,水にも侵されない.酸には水素を発生し,塩をつくって溶ける.常温で塩素,臭素と化合し,熱すればヨウ素,酸素,水素とも結合する.強熱すればアンモニア,硫黄,硫化水素とも反応する.高温では燃焼してGa2O3となる.ほかの金属を侵し合金をつくって溶ける.保存容器として使える材料はタングステン,タンタルのみである.高温用温度計,低融点合金の成分,半導体の製造などに用いられる.67Ga はガリウムシンチレーション法に用いられる.[CAS 7440-55-3][別用語参照]ガリウム化合物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガリウム」の意味・わかりやすい解説

ガリウム
gallium

元素記号 Ga ,原子番号 31,原子量 69.723。天然には2種の安定同位体であるガリウム 69と 71がある。周期表 13族の元素。 1875年フランスの P.ボアボードランにより発見された。希元素ではあるが,地殻に広くかつ均一の濃度で分布している。単体は銀白色の金属で,融点 29.78℃。化学的性質はアルミニウムに類似する。酸,アルカリと反応して溶解し,水素を発生する。融点が低いので,高温寒暖計に,また低融点合金,半導体材料などとして使用される。

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百科事典マイペディア 「ガリウム」の意味・わかりやすい解説

ガリウム

元素記号はGa。原子番号31,原子量69.723。融点29.7646℃,沸点2208℃。1875年P.E.ルコック・ド・ボアボードランが発見,ガリアGalliaにちなんで命名。帯青白色の柔らかい金属。空気中では安定。酸,アルカリに可溶。融点が低いため,低融点合金,温度計などに使用。III‐V化合物半導体の材料として重要で,発光ダイオードやレーザー素子,高速動作トランジスターに利用されている。おもにボーキサイトからアルミナを精製する際の副産物として得られる。

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