Xe.原子番号54の元素.電子配置[Kr]4d105s25p6の周期表18族希ガス元素.原子量131.293(6).天然に存在する同位体核種は質量数124(0.0952%),126(0.0890),128(1.910),129(26.4006),130(4.0710),131(21.2324),132(26.9086),134(10.4357),136(8.8573)と非常に多い.乾燥大気の0.087体積 ppm を占める.放射性核種は質量数109~147の間に40種以上あり,127のものが半減期36.4 d,136Xe は > 2.4×1021 y.124Xe は1.1×1017 y で大気中に存在する.ウラン核分裂の際に生成される 135Xe は熱中性子吸収断面積が大きく(2.6×106 バーン),原子炉運転の際に障害となるので中性子毒として知られる.1898年,W. Ramsay(ラムゼー)とM.W. Traversによって液体空気の分留中にKr留分から発見された.ギリシア語の“よそ者”ξενοσから名づけられた.
大気中に0.087体積 ppm,火星の大気中にも0.08体積 ppm 存在する.液体空気の分留最後の留分から得られ,活性炭による分別吸着,蒸発,ガスクロマトグラフィーによって精製される.無色,無臭の気体.数十万atm 下で金属キセノンがつくられた.融点161.3 K(-111.9 ℃),沸点165 K(-108.1 ℃).臨界温度256.5 K(16.6 ℃).三重点161.3 K.液体の密度2.939 g cm-3(沸点),固体の密度3.54 g cm-3(三重点)と重い.第一イオン化エネルギー1170.4 kJ mol-1(12.13 eV).1962年以前は誤ってまったく不活性と思われていたが,同年,カナダのN. BartlettによりXePtF6が合成され,その後,フッ化物や酸化物,フッ化酸化物が合成された.酸化数2,4,6,8.フッ素との反応は容易に起こり,XeF2はXeと F2 の混合気体をガラス容器に入れ,太陽光を当てるだけで無色の結晶が得られる.Xe自体は無毒であるが,化合物は酸化力が強いために有毒である.
用途は,Xe中の放電を利用したキセノンランプ用で,発光スペクトルが太陽光に似ているので白色光源として写真用のフラッシュランプ,灯台用ランプ,最近では高輝度を利用して自動車のヘッドライト用にも用いられる.液体は素粒子物理学用の検出器(ニュートリノ,暗黒物質)やイメージングデバイスに媒質として使用される.[CAS 7440-63-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第0族に属する希ガス元素の一つ。1898年7月,イギリスのW.ラムゼーとトラバースMorris William Traversは液体空気を分留し,クリプトンKr,ネオンNeを除いた最後の部分に沸点の低い,重い気体の新元素を発見した。ギリシア語のxenos(異国の)にちなんでキセノンと命名した。空気中に含まれる量は約9×10⁻6体積%で,ラドンを除く希ガス元素中最も少ない。無色,無臭の気体。単原子分子からなり(原子半径2.2Å),化学的にきわめて不活性。水和物Xe・5.76H2O(融点23.5℃,分解圧0.1℃で1.15気圧)や,ヒドロキノンとの間にXe・3C6H4(OH)2をつくるが,これらはクラスレート化合物であって,水分子やヒドロキノン分子の水素結合によって生ずる三次元網目構造の中にキセノン原子がとりこまれたもので,原子価結合のある真の化合物ではない。真の化合物としては,1962年カナダのバートレットN.Bartlettにより合成されたヘキサフルオロ白金酸キセノンXePtF6と,同年アメリカのクラーセンH.H.Claassenらにより合成された四フッ化キセノンXeF4が初めである。それ以後,フッ化物および酸化物を中心として,かなりの量の化合物がつくられている。
→希ガス化合物
執筆者:中原 勝儼
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