家庭医学館 「キノコ中毒」の解説
きのこちゅうどく【キノコ中毒】
晩秋から初冬にかけて、キノコを食べて食中毒をおこす人が、届出数だけでも毎年、500人前後にのぼります。
[症状]
種類によって有毒成分が異なるので、症状もいろいろです。おもなものはつぎのとおりです。
■胃腸炎型中毒
食後30分~2時間後に嘔吐(おうと)、腹痛、下痢(げり)がおこります。重症の場合は胸内苦悶(きょうないくもん)、虚脱(きょだつ)状態にもなりますが、ふつうは数時間~1日で回復します。
ツキヨタケ、イッポンシメジ、ドクベニタケなどでおこる中毒で、日本でもっとも多くみられます。
■コレラ型中毒
食後6~15時間して、腹痛をともなう激しい嘔吐や下痢がおこって脱水状態になります。
軽いときは、約2日間この状態が続き、一過性(いっかせい)の肝障害がおこる程度で回復しますが、重症の場合は、体温の低下、呼吸困難、チアノーゼなどが生じ、意識障害をおこして2~4日後に死亡します。この時期をもちこたえ、死を免れても肝障害が長く残ります。
タマゴテングタケ、ドクスギタケ、ツキヨタケなどでおこります。
■神経型中毒
おこる症状に4つの型があります。
ドクスギタケ、ドクベニタケの場合は、食後まもなく冷や汗、よだれ、視力障害などがおこり、軽い場合は8~12時間で回復しますが、重い場合は、虚脱(きょだつ)状態になり、10%以上の人が死亡します。
ワライタケの場合は、酩酊(めいてい)状態になり、意識がなくなったり、踊り騒いだりしますが、1日くらいで回復します。
ベニテングタケやテングタケの場合は、食後1~2時間して嘔吐、腹痛、下痢、ついで耳鳴(みみな)り、めまい、視力障害が生じ、興奮、状態になりますが、半日くらいで回復に向かいます。
ヤブシメジやヤケドタケの場合は、食後1日~数日して、手足の先が赤く腫(は)れて痛み、2~4週間続きます。
[治療]
生命にかかわることもありますから、発病したら、すぐに医師の治療を受けることが必要です。食べたキノコをすべて吐き出させ、胃を洗浄(せんじょう)し、下剤を使って毒物を排出(はいしゅつ)させるといった処置と、症状に応じて、アトロピン、強心薬(きょうしんやく)、人工呼吸器を用い、脱水状態のときは輸液を行ないます(「食中毒が疑われるときの手当」)。
キノコ中毒に特効薬はありません。
[予防]
昔からいい伝えられているキノコの見分け方、たとえば、茎が縦(たて)に裂ける・色が鮮やかではない・苦(にが)みや辛(から)みがない、といったキノコは食べられるという情報は、信頼できません。
従来から食用に供されてきたものだけを食べることです。
なお、食用キノコでも、腐敗(ふはい)すると胃腸型中毒をおこすことがあります。古いキノコや調理後、時間のたったキノコは捨てましょう。