キム・ジハ(読み)金 芝河(その他表記)Kim Ji-ha

現代外国人名録2016 「キム・ジハ」の解説

キム・ジハ
金 芝河
Kim Ji-ha

職業・肩書
詩人,劇作家

国籍
韓国

生年月日
1941年2月4日

出生地
朝鮮・全羅南道木浦(韓国)

本名
金 英一(キム ヨンイル)

学歴
ソウル大学美学科〔1966年〕卒

受賞
ロータス賞(特別賞)〔1975年〕,クライスキー財団人権賞(オーストリア)(1981年度),西江大学名誉文学博士〔1993年〕,怡山文学賞〔1993年〕「金芝河詩全集」

経歴
在学中に1960年の四月革命(4.19革命)を体験、翌年の朴政権登場以後、反政府運動を続ける。追われて地下に潜行。’69年詩誌「詩人」に「ソウルへの道」を発表して文学活動をはじめ、’70年「思想界」に権力・富裕層を痛烈に風刺した長編詩「五賊」を発表して世界に知られる。’72年風刺詩「蜚語」を発表、反共法違反で拘束される。’74年民青学連事件に関係したとして逮捕死刑判決後、無期減刑。’75年一時釈放されるが1ケ月後別件で再逮捕、’80年12月刑の執行停止で釈放された。この間、’75年にアジア・アフリカ作家会議のロータス賞特別賞受賞。’82年12月大河長編小説「南」が出版不許可。’84年風刺詩「タラニ」収録の詩集が韓国内で発売されベストセラーになる。同年2月政治活動禁止解除、小説「南」も刊行が開始される。’90年裁判時効が成立して免訴となった。また、’89年12月より仲間と一緒に生命復興運動〈ハンサルリム〉運動を始め、のち地方自治支援や環境問題でも活動。他の主な作品に、詩集「黄土」「燃える渇きで」「金芝河詩全集」(3巻)、詩「桜賊歌」、戯曲「銅の李舜臣」「鎮悪鬼」、談話集「めし」、エッセイ集「傷痕に咲いた花」などがある。’98年初来日。

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改訂新版 世界大百科事典 「キム・ジハ」の意味・わかりやすい解説

キムジハ
Kim Ji-ha
生没年:1941-

韓国の詩人,本名は金英一。日本では金芝河とも記す。全羅南道木浦生れ。ソウル大学校美学科卒。在学中に1960年の四月革命を体験,61年の五・一六クーデタによる朴正煕政権の登場以後,反政府運動を続ける。69年詩誌《詩人》に〈ソウルへの道〉を発表,文学活動を始める。70年5月《思想界》誌に権力層,富裕層を痛烈に風刺した譚詩《五賊》を発表,反共法違反で逮捕された。詩の主題は,貧しい力のない民衆の怨恨と権力・暴力に対する憤りであり,パンソリや仮面劇などの民衆的伝統をふまえ俗語や擬態語などを駆使した詩形も独得である。強権に反対する民主化闘争の過程で投獄され,病気,地下潜行,獄中生活を繰り返し,通算7年に及ぶ獄中生活を経て80年末に釈放。その間も〈良心宣言〉(1975)などの形で自由・正義,南北統一への意志を強烈に表現した。投獄中は日本をはじめ世界各地で救命運動が起こる。75年にアジア・アフリカ作家会議のロータス賞,81年度クライスキー財団(オーストリア)の人権賞が贈られた。獄中メモ,詩のほとんどが日本語に訳され,82年末には連作詩の一部である大説《南》を発表するなど,韓国の〈闘う詩人〉〈民族詩人〉として脚光を浴びている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キム・ジハ」の意味・わかりやすい解説

キム・ジハ(金芝河)
キム・ジハ
Kim Ji-ha

[生]1941.2.4. 全羅南道,木浦
[没]2022.5.8. 江原道,原州
韓国の詩人。本名金英一。 1995年よりキム・ヒョンという筆名を用いている。 1966年ソウル大学文学部美学科卒業。 70年特権階級を風刺した詩『五賊』を書き,反共法違反で拘留された。 74年5月民青学連事件に関連したとして逮捕され,7月国防部普通非常軍法会議で大統領緊急措置4号違反などで死刑を宣告されたが,翌年釈放された。しかし釈放後,『東亜日報』に連載した手記『苦行-1974』で人民革命党事件の捏造を非難したことから反共法違反容疑で再逮捕され,国際的に釈放要求の声が湧き起った。 80年 12月再度釈放。その後沈黙を続けていたが,91年4月の明知大生の姜慶大殴打致死事件を契機に起った一連の焼身自殺事件に対し,「焼身自殺は止めよ」とのアピールを出し,学生運動家から強い批判を浴びた。代表作には『黄土』 (1970) ,『飛語』 (72) などの詩のほかに戯曲『銅の李舜臣』 (70) ,『鎮悪鬼』 (73) などがある。

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百科事典マイペディア 「キム・ジハ」の意味・わかりやすい解説

キム・ジハ

韓国の詩人。本名は金英一。日本では金芝河とも記す。1970年に当時の朴正煕大統領の政治に抗議して,支配層の腐敗を風刺した譚詩《五賊》を発表し逮捕,投獄される。以後もパンソリの伝統を生かした《櫻賊歌》《蜚語》などの詩を発表する一方,民主主義擁護の運動による獄中生活で1970年代の政治運動の象徴となる。1990年代に入ってやや宗教的な生命運動に携わっている。
→関連項目朴景利

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キム・ジハ」の意味・わかりやすい解説

キムジハ
きむじは

金芝河

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のキム・ジハの言及

【スカトロジー】より

…本来は〈糞便学〉を意味したが,転じて今日では〈糞尿趣味〉〈糞尿譚〉を意味する語。ギリシア語のskatos(糞便の)を語源とする。ちなみに糞便の臭気のもとである物質はスカトールscatoleという。スカトロジーという言葉が用いられるようになったのは19世紀後半であるが,糞尿への関心は古くから存在していた。神話や伝承にその例が見られ,たとえば《古事記》には,伊弉冉尊(いざなみのみこと)の大便や小便から生まれた神(大便からは波邇夜須毘古神(はにやすびこのかみ)と波邇夜須毘売神(はにやすびめのかみ),小便からは弥都波能売神(みつはのめのかみ))が出てくる。…

【朝鮮文学】より

…文学は演劇とともに民衆との距離を着実に縮めつつあるといえる。テーマも多様化しており,金東里のように土俗の美をえがくもの,キムジハ(金芝河)のように都市と農村の社会的矛盾をえがくもの,趙世熙のように労働問題をあつかうもの,朴泰洵のように強引な近代化と物質万能主義に懐疑をなげかけるもの,尹興吉のように南北分断状況を自己の痛みとしてうけとめるものなどさまざまであるが,概して韓国の作品は日本の風俗小説や私小説的なものは少なく,広義におけるモラル,人間いかに生きるべきかという問いを追求する太い骨格をもっているといえよう。 一方,朝鮮民主主義人民共和国の文学は民衆を革命的世界観と共産主義思想で武装させるための教科書としての役割を担っている。…

【恨】より

…韓国では植民地時代から解放後の〈外勢〉と〈独裁〉のもとで,恨は民族の〈恨〉として強く意識化されてきた。詩人キムジハは,恨を個人的・集団的に過去の歴史のなかで蓄積された〈悲哀〉であると定義し,第三世界の抑圧された民衆の抵抗の根源的活力と捉えている(《不帰》)。【金 学 鉉】。…

※「キム・ジハ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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