朝鮮、李朝(りちょう)、壬辰(じんしん)・丁酉倭乱(ていゆうわらん)(豊臣(とよとみ)秀吉の朝鮮侵略)における水軍の名将。徳水の人。字(あざな)は汝諧(じょかい)。貞の子。漢城(ソウル)に生まれ、1576年武科に及第した。女真(じょしん)との戦いに軍功をたて、柳成龍(りゅうせいりゅう)の推薦を受けて91年に全羅左道水軍節度使となった。船上に蓋(ふた)をのせ錐(すい)刀を装備した亀甲(きっこう)船を建造して防備に努め、翌92年壬辰の乱が起こると慶尚左道水軍節度使の元均を救援して、日本水軍を玉浦、唐浦、唐項浦、閑山島、釜山(ふざん)など慶尚道海域に連破した。その大勝により朝鮮軍は制海権を確保し、戦局を転換して日本の侵略を挫折(ざせつ)させる機をつくりだした。宣祖は舜臣の軍功を厚く賞し、93年忠清全羅慶尚三道水軍統制使を兼職させて全水軍の指揮をゆだねた。97年丁酉の乱には、初め元均の讒言(ざんげん)により統制使を罷免されたが、元均の敗死後に再起用され、少数の兵力により善戦して日本水軍を圧迫し、98年11月露梁(ろりょう)の戦いに大勝したが弾丸にあたって戦死した。忠武公と諡(おくりな)を贈られ、救国の名将として長く追慕された。
[糟谷憲一]
朝鮮,李朝の名将。字は汝諧。諡号(しごう)は忠武。徳水の人。1576年武科に合格し,柳成竜の推挙で91年2月全羅左道水軍節度使となる。壬辰倭乱(文禄の役)に際し,亀甲船をつくり,当時,斬り込みを中心とする接舷戦法が基本となっていた海戦で火砲戦法を用い,構造的に竜骨を用いず船体の弱い日本海軍に閑山島沖などで連勝した。その功により93年8月,三道(慶尚・全羅・忠清)水軍統制使に任ぜられたが,97年1月,慶尚右道水軍節度使元均らの中傷により無実の罪で捕らえられる。丁酉倭乱(慶長の役)の勃発で97年7月,再び統制使に任ぜられ,珍島沖の潮流を利用した海戦などで活躍するが,98年11月,露梁海戦で銃弾にたおれ戦死した(文禄・慶長の役)。李舜臣は朝鮮の救国英雄とされ,釜山やソウルには銅像がある。遺稿集に《忠武公全書》。
執筆者:矢沢 康祐
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1545~98
朝鮮王朝時代の軍臣。壬辰(じんしん)・丁酉(ていゆう)の倭乱(文禄・慶長の役)のときの水軍の指揮者。本貫(ほんがん)は徳水。字は汝諧(じょかい)。1576年(宣祖9年)武科に及第し,壬辰の倭乱の起こる前年に全羅左道水軍節度使に任じられた。壬辰の倭乱では彼自身が改良を加えた亀甲船をもって豊臣軍を大いに苦しめ,制海権の確保に尽くした。97年(宣祖30年)に無実の罪で逮捕され,処刑されかけたが,丁酉の倭乱の過程で再度登用され,海戦の指揮にあたった。翌年,露梁(ろりょう)の海戦の際に銃弾を受けて戦死した。死後,忠武と諡された。文集に『忠武公全書』がある。現在も日本の侵略を破った救国の英雄として尊敬を集めており,韓国各地にその像や,彼を記念する建造物が多くつくられている。
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1545.3.8~98.11.19
朝鮮王朝中期の武将。徳水の人。字は汝諧,諡は忠武。1576年武科及第。92年壬辰倭乱(文禄の役)がおこると,朝鮮半島南岸各所で日本水軍を撃破,沿岸制海権を確保した。功により正二品正憲大夫,忠清・全羅・慶尚三道水軍統制使となる。97年1月讒言(ざんげん)により逮捕投獄されたが,同年7月復職。翌年11月露梁(ろりょう)津の戦闘中に没。日本軍の得意な銃撃・白兵戦を防ぐために考案した亀甲船は有名。
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…文禄の役(壬辰の乱)のとき大海戦の戦場となり,以来水軍の本拠地となった。長く統営とよばれていたが,1955年水軍の将李舜臣の号をとり忠武市となり,のち古名に戻った。漁業のほか缶詰などの食品工業があり,それに特産物の螺鈿,漆器でも知られている。…
… 緒戦における日本軍の勝因としては,(1)当初,朝鮮の地方長官や軍隊の指揮官の多くが日本軍に抵抗せず,戦争を回避したり逃亡したこと,(2)日本軍は戦国時代を経て戦争になれていたうえ,朝鮮側にない鉄砲(鳥銃)を使用したこと,(3)朝鮮政府の封建的支配に不満を抱く民衆や軍卒の間に,朝鮮の支配層に対する反抗や日本軍への協力(附倭)が現れ,当初,民族的結集に困難が生じたこと,などがあった。しかし海上では,92年5月から李舜臣の率いる朝鮮海軍が活躍し,5月末には亀甲船(きつこうせん)も登場,92年7月の海戦で日本海軍は大敗北をこうむった。以後,日本軍は海上補給路をおびやかされるようになる。…
※「李舜臣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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