キリ(英語表記)paulownia
Paulownia tomentosa(Thunb.)Steud.

デジタル大辞泉 「キリ」の意味・読み・例文・類語

キリ

《〈ポルトガルcruz十字架)から》
10の意。
最後。また、最低のもの。「ピンからキリまで」⇔ピン
天正カルタ4種48枚のうち、各種の12枚目。

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精選版 日本国語大辞典 「キリ」の意味・読み・例文・類語

キリ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ポルトガル語] cruz (クルス「十字架・十字形」の意)の変化した語からか )
  2. 天正カルタ四種四八枚中、各種の一二枚目。〔和漢三才図会(1712)〕
  3. ( 十字架の意から転じて ) 一〇の意。
  4. ( 「ピンからキリまで」の形で ) 最後のもの。また、最低のもの。⇔ピン
    1. [初出の実例]「ピンからキリまである東京だもの」(出典:放浪記(1928‐29)〈林芙美子〉)

キリの補助注記

については、和語の「きり(切)」からという説も有力であるが、一般に外来語意識があってカタカナで書く。

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改訂新版 世界大百科事典 「キリ」の意味・わかりやすい解説

キリ (桐)
paulownia
Paulownia tomentosa(Thunb.)Steud.

高さ10~15m,直径40~50cmになるゴマノハグサ科落葉樹で,生長が速い。樹皮は灰白色で平滑。葉は長さ15~35cmの長い葉柄があって対生し,葉身は基部が心形をした直径20~45cmの広卵形で,全縁または3~5浅裂する。全面に軟毛を密生する。5月ごろ,枝端に生じた大型の円錐花序に多数の両性花を咲かせる。花冠は長さ5~6cmの筒状鐘形で,淡紫色。おしべ4本。果実は革質の蒴果(さくか)で,長さ3~4cmの広卵形,熟すと2裂して多数の小さい種子を出す。中国原産で,古く朝鮮を経て日本に渡来したと考えられるが,本州や九州の一部にも自生状態の群落がみられ,はっきりしたことは不明である。各地で栽培されるが,主産地は福島,岩手,新潟,山形,茨城,栃木など東北,関東の諸県で,四国,九州などの暖地ではてんぐ巣病のためまとまった植栽がされない。福島県の会津桐,岩手県の南部桐がとくに有名である。キリ材は散孔材的な傾向をもつ環孔材で,くすんだ白色から淡褐灰色を示す。気乾比重約0.3で,国産材の中では最も軽軟であり,加工しやすく,狂いや割れがなく,仕上がりは光沢があって美しい。吸湿,吸水性がひじょうに低いため湿気を通さず,また軽軟なわりにはもろくない。このようなすぐれた特性のため,たんすをはじめ種々の和家具,建具,天井板,細工物,彫刻,琴,下駄など用途が広く,炭は絵画用,眉墨,黒色火薬に用いられる。キリ属は約10種からなり,中国のほか台湾に2種がある。しかし種類間に明確な特徴が少なく,分類のむずかしい属である。このうちココノエギリP.fortunei Hemsl.,タイワンギリP.kawakamii Itoは,日本でも栽培されることがあるが,材質はやや劣っている。キリは19世紀中ごろ北アメリカへ移入された。また最近は南アメリカでも日本人移民によって栽培されている。1982年,日本のキリ材年間需要は約15万m3であるが,国内生産量は1960年ごろから急速に減少し,現在は約90%を中国,台湾,北アメリカ,南アメリカから輸入している。分類学上キリはノウゼンカズラ科に入れられることもある。
執筆者:

桐は中国で鳳凰(ほうおう)の住む木としてたっとばれてきた。日本でもこの思想から天皇の袍(ほう)の模様に桐竹鳳凰をつけ,その他の調度器物の模様にもこの模様が多く用いられた。紋章としての桐文はこうした文様が固定したものと思われ,皇室では花とならんで桐も紋章として用いられていた。足利氏,豊臣氏の桐の紋も皇室から与えられたといわれ,これがさらにその一族または家臣の間にひろがったので,武家のあいだにこの紋を用いる家は多い。紋の種類は三つ葉に五七または五三の花をつけた大内桐,嵯峨桐,鬼桐などのほか,これを円形に扱った割桐や桐車,桐丸の類から,桐菱(きりびし),桐蝶(きりちよう),蝙蝠(こうもり)桐などのような変わったものまで,130~140種におよんでいる。
紋章
執筆者:



キリ(切) (きり)

(1)能の用語。謡事の一種。七五調韻文体の7~11句から成る,中音域を主とした旋律のすくない楽曲。初句と終句は繰り返されるのが普通。謡のリズムは地拍子の法則に合う。能1曲の結語として最終末に置かれ,作者の総括的な感想やシテの後日談などを内容とする。なお,1曲の最終末部分をすべてキリと呼ぶ場合があるが,この広義のキリには,〈哥(うた)・中ノリ地・ノリ地〉などさまざまな謡事が含まれる。
執筆者:(2)義太夫節の用語。義太夫節では,時代物の場合5段,世話物の場合3巻で構成される。これは能の5段組織,あるいは序・破・急の原理によるものとされる。そして,時代物,世話物を問わずに各段・各巻が〈口(くち)〉〈中(なか)〉〈切(きり)〉の3部分に分けられる。切は3部分(場(ば))に分けられた最後の部分にあたり,切場(きりば)ともいう。口,中はこれに対して端場(はば)と呼ばれる。序・破・急の原理から,5段組織の時代物では第3段(あるいは第4段)がもっとも山場となり,さらにその切場は全体の中で非常に重要なききどころといえる。したがって,3段目の切を語る太夫は最高の位の演奏家であり,一般に〈紋下(もんした)〉あるいは〈櫓下(やぐらした)〉と呼ばれる太夫がこれをうけもつ。義太夫節では長唄や他の浄瑠璃と違って,太夫1人に三味線奏者1人(相三味線(あいじやみせん))を原則とするため,1段を1人で語ることは困難であり,口・中・切と3人で分担している。切は各段のしめくくりであり,特に3段目の切(三の切)はもっとも悲劇的な個所となる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のキリの言及

【義太夫節】より

…日本古典音楽の種目。竹本義太夫が創始した浄瑠璃の流派。人形芝居の音楽として17世紀後半に成立し,幕末期以後は文楽人形浄瑠璃の音楽として,ひろく親しまれてきた。また,素浄瑠璃として,音楽だけを演奏する場合もある。ふつう浄瑠璃を語る太夫1人,三味線1人で演奏するが,掛合といって大勢で演じたり,箏,胡弓,八雲琴や,ツレ弾きの三味線が加わる曲もある。
[歴史]
 1684年(貞享1),竹本義太夫(筑後掾)が大坂道頓堀に竹本座を創設して,独立興行に踏み出したときにはじまる。…

※「キリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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