キリ(読み)きり

日本大百科全書(ニッポニカ)「キリ」の解説

キリ
きり / 桐
[学] Paulownia tomentosa (Thunb.) Steud.

ゴマノハグサ科(APG分類:キリ科)の落葉高木。高さ8~15メートルになる。樹皮は灰白色で皮目が多い。葉は長い柄があって対生し、広卵形、長さ20~30センチメートル、先はとがり、全縁または浅く3~5裂し、全面に粘毛を密生する。つぼみは前年にでき、5月ころ枝先の円錐(えんすい)花序に淡紫色の花を開く。花冠は筒状鐘形、長さ5~6センチメートルで、先は唇形に5裂する。外面は長い軟毛を密生し、筒内に紫点の縦条(たてすじ)が15内外ある。萼(がく)は質厚で、5中裂し、裂片は先は鈍くとがり、褐色の絨毛(じゅうもう)を密生する。雄しべは4本でうち2本は長く、雌しべは1本。果実は蒴果(さくか)で、卵形、長さ3~4センチメートルで先がとがる。10、11月に熟して2裂し、種子は扁平(へんぺい)で多数あり、膜質の翼がある。九州の宮崎および大分県、隠岐(おき)諸島、欝陵(うつりょう)島などに野生状のものが知られている。原生地はまだ明らかでないが、中国中部原産と考えられる。北海道から九州まで広く栽培されている。

 一般に根伏せで殖やし、苗を定植した翌春に根元から幹を切り(台切りという)、切り株から出る新条を1本育てるとよく成長する。福島、岩手、新潟、茨城などの各県が主産地で、福島県の会津、岩手県の南部桐など良質のキリ材が出る。岩手県ではキリの花を県の花にしている。キリ材は日本産の材ではもっとも軽く、割れにくく、狂いが少なく、湿気を通しにくく、火に強くて燃えにくく、木目、材色が優れている。家具、器具、小箱材などに用い、1955年(昭和30)以前は下駄(げた)に多く使われたが、現在はたんす類に多く使われる。このほか、琴、胴丸火鉢、漁網用浮き、桐炭(きりずみ)(研摩用、懐炉灰、火薬の原料)、日本人形のねりしん、名札などにする桐紙などがある。

 このほか、材をキリと同様に用いるタイワンウスバギリP. × taiwanensis Hu et ChangはココノエギリP. fortunei (Seem.) Hemsl.とタイワンギリP. Kawakamii Itoの中間種で、1935年(昭和10)ごろ導入され、タイワンギリ、ココノエギリなどと誤称して植栽してきたもので、成長は速いが、材質はやや劣る。キリ属は中国中・南部、インドシナ半島北部に分布し、6種知られる。

[小林義雄 2021年10月20日]

 APG分類ではキリの仲間はキリ科Paulowniaceaeとして独立した科となった。この分類によるとアジアに3属20種があり、日本には中国原産のキリがみられる。

[編集部 2021年10月20日]

文化史

中国では、アブラギリやアオギリなど科の異なる葉の広い高木も桐の名で総称されたため、古書には混乱が多い。『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』(500ころ)には4種の名があがる。『斉民要術(せいみんようじゅつ)』によると、6世紀には栽培下にあって楽器が製造された。『万葉集』には、729年(天平1)に大伴旅人(おおとものたびと)が藤原房前(ふささき)に対馬(つしま)産の梧桐(ごとう)でつくらせた日本琴を贈ったとあるが、この梧桐にはキリとアオギリの2説がある。平安時代には庭で栽培されていたことが『枕草子(まくらのそうし)』や『源氏物語』からうかがえる。

[湯浅浩史 2021年10月20日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典「キリ」の解説

キリ

〘名〙 (cruz (クルス十字架・十字形」の)の変化した語からか)
① 天正カルタ四種四八枚中、各種の一二枚目。〔和漢三才図会(1712)〕
② (十字架の意から転じて) 一〇の意。
③ (「ピンからキリまで」の形で) 最後のもの。また、最低のもの。⇔ピン
※放浪記(1928‐29)〈林芙美子〉「ピンからキリまである東京だもの」
[補注]③については、和語の「きり(切)」からという説も有力であるが、一般に外来語意識があってカタカナで書く。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉「キリ」の解説

キリ

《〈ポルトガルcruz(十字架)から》
10の意。
最後。また、最低のもの。「ピンからキリまで」⇔ピン
天正カルタ4種48枚のうち、各種の12枚目。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

粉骨砕身

骨を粉にし、身を砕くこと。力の限り努力すること。一所懸命働くこと。[活用] ―する。[使用例] こうなったら、粉骨砕身、身をなげうって社長の政界入りをお手助けせにゃあ[三島由紀夫*近代能楽集|1950...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android