ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クローン」の意味・わかりやすい解説
クローン
clone
1980年代にはクローン・ハツカネズミが誕生した。妊娠したハツカネズミの子宮から胚を取り出し,その体細胞の核を別のハツカネズミの除核した受精卵に移植し,この細胞を培養して胚にし,それを別のハツカネズミの子宮で成長させるという手法であった。成体の細胞からクローンをつくることははるかに難しい。動物のほぼすべての細胞には個体全体をつくりだす遺伝情報が含まれているが,すでに組織や器官に分化した細胞は,その複製に必要な遺伝情報しか伝えなくなる。そのためクローニングも,まだ血液や皮膚,骨などに分化していない胚細胞からにかぎられる傾向にあった。
成長した哺乳動物のクローンづくり(→クローン羊)に初めて成功したのは 1996年,イギリス,ロスリン研究所のイアン・ウィルムット博士率いる研究チームである。クローニングの実用化は経済的に有望視されている。畜産業者は高品質の家畜のクローンづくりを歓迎するだろうし,遺伝子組み換え動物のクローニングによって,薬あるいは治療に役立つ蛋白質の生産を増やすこともできよう。また生物学的研究にも,遺伝的に同一なクローンは大いに有用である。人間のクローンづくりは,倫理的・道徳的問題をはらんでいる。クローニングがある特定の遺伝的特性の複製を無限にもたらすものだとすれば,どの特性がそれに値するのか判断をくだす必要があり,それを託される人々は,人類の進化の道筋を変える立場に立つことになる。DNA組み換え技術の遺伝子操作への応用は,遺伝子クローニングとも呼ばれる。
クローン
Krohn, Kaarle
[没]1933
フィンランドの民族学者。フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』の研究に従事し,その方法を確立,発展させた。『カレワラ研究』 Kalevalastudien (6巻,1924~28) ,『民俗学方法論』 Die folkloristische Arbeitsmethode (26) などの著書がある。
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