ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「ゴルトシュミット」の解説
ゴルトシュミット
Goldschmidt, Richard Benedict
[没]1958.4.24. カリフォルニア,バークリー
ドイツ生れのアメリカの動物学者,遺伝学者。ハイデルベルク大学卒業 (1900) 。ミュンヘン大学助教授 (09) 。カイザー・ウィルヘルム研究所に入り (14) ,所長 (21) 。 1936年ナチスに追われてアメリカに渡り,カリフォルニア大学バークリー校教授 (36~46) 。ヨーロッパ,アジアの各地方からマイマイガ (ドクガ科) の種々の変種を集めて交雑し,メンデルの法則に従って変種の特徴が遺伝することを発見。地理的隔離による変種の生成を遺伝学的に研究する基礎をおいた。マイマイガ交雑実験中に間性を発見し,一方の性を決定する因子の支配下で発生を続けていた個体が途中から他方の性決定要因の支配を受けるようになると間性になると説明した。なお間性の研究の一部は,日本に滞在した際 (24~26) に東京帝国大学農学部で行われた。 35年にはショウジョウバエを実験材料として表現型模写の現象を発見。温度などの環境要因を変化させることにより,遺伝子はもとのままで表現型だけが突然変異体に似た個体を得て,表現型が遺伝子のみによって決定されるのではないことを明らかにした。彼は遺伝学と生理学との連続性を強調し,遺伝子は化学反応を通じて形質を支配すると考えた。『生理遺伝学』 Physiological Genetics (38) は,このような理念のもとに書かれ,遺伝学のその後の発達に影響を与えた。
ゴルトシュミット
Goldschmidt, Adolph
[没]1944.1.5. バーゼル
ドイツの美術史学者。 1903年ベルリン,04年ハレ,12~29年ベルリンの各大学教授を歴任。 39年スイスへ移住。中世美術史の権威として知られ,厳格な様式批判の方法論を主張。主著『8~11世紀におけるカロリング朝とザクセン朝の象牙彫刻』 Die Elfenbeinskulpturen aus der Zeit der karolingischen und sächsischen Kaiser des 8-11Jh. (3巻,1914~23) ,『中世初期のドイツの青銅扉』 Die deutschen Bronzetüren des frühen Mittelalters (26) ,『ドイツのミニアチュア絵画』 Die deutsche Buchmalerei (2巻,28) など。
ゴルトシュミット
Goldschmidt, Victor Moritz
[没]1947.3.20. オスロ
ノルウェーの鉱物学者,岩石学者,地球化学者。オスロ大学で学ぶ。オスロ大学教授 (1914) 。ゲッティンゲン大学教授 (29~35) 。ナチスに追われてノルウェーに戻り (35) ,のちイギリスに逃げる (43) 。第2次世界大戦後オスロに再び戻る。 1920年頃まで南ノルウェーの変成岩,深成岩の研究を行い,相律の観点から鉱物構成を解析し,変成作用,交代作用の研究に新分野を開き,のちに隕石,岩石圏の元素の分配律を究明した。主著に『物質の地球化学的分配法則』 Geochemische Verteilungsgesetze der Elemente (8巻,23~38) がある。
ゴルトシュミット
Goldschmidt, Levin
[没]1897.7.16. カッセル
ドイツの代表的な商法学者。ハイデルベルク大学員外教授 (1860) ,同正教授 (66) 。ライプチヒ高等商事裁判所判事 (70~75) ,ベルリン大学初代商法教授 (75~97) を歴任。商法の理論的研究ならびにローマ法および中世イタリア法を中心とした商法史の研究にすぐれた業績を残し,『全商法雑誌』 Zeitschrift für das gesamte Handelsrechtを創刊した (58) 。主著『商法提要』 Handbuch des Handelsrechts (1巻,64~68) ,"System des Handelsrechts" (92) 。
ゴルトシュミット
Goldschmidt, Hans
[没]1923.5.20. バーデンバーデン
ドイツの化学者。 1899年,金属酸化物とアルミニウム粉末を混合し,加熱・還元して純粋な金属を得るテルミット法 (ゴルトシュミット法) を発明した。この技術は溶接にも用いられる。 (→テルミット溶接 )
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