サイクロトロン(英語表記)cyclotron

翻訳|cyclotron

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

加速器の1種で,大型磁極間で円運動する荷電粒子に一定周波数の高周波電場を加えて周期的に繰返し加速する装置。磁場に垂直な面内の円運動の半径 r と周期 T は粒子の運動量 mv ,電荷 Q ,質量 m ,磁束密度 B を用い,rmv/QBT=2πm/QB で表わされる。半径 r は粒子の速さ v とともに増大するが,周期 T は一定である。磁極間の円板状の真空容器の中心部から荷電粒子を放出し,容器内にD字形の2個の電極を対置し,その間に T と同じ周期の電場を加えると,円運動する荷電粒子は電極の間隙を通過するごとに繰返し加速される。質量 m は静止質量 m0 ( c は真空中の光速度 ) の関係がある。通常のサイクロトロンでは磁界 B が一定なので,前記の加速方法は mm0 に近い範囲に限られる。 AVFサイクロトロン (azimuthal varying field cyclotron) では m の増加に応じて粒子に働く磁場が変って周期 T を一定に保つように設計されているので,さらに高いエネルギー (陽子では約 500 MeV 程度) まで加速することができる。

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百科事典マイペディアの解説

荷電粒子(陽子,α粒子など)の加速器の一つ。1930年E.O.ロレンスとM.S.リビングストンが考案。真空にした加速箱の中に2つの半円形の中空電極(ディーという)を向かい合わせ,これに高周波電圧をかけるとともに,電磁石で上下に強い磁場をかける。ディーの中心部のイオン源から出た粒子は,磁場によってディーの中を円運動しながら,ディーの間隙(かんげき)を通るごとに高周波電圧で繰り返し加速され容易に高エネルギーに達する。しかし20〜30メガ電子ボルトどまりで,それ以上は粒子質量の相対論的増加(特殊相対性理論)がきいてくるため加速困難。さらに高エネルギーに加速するための装置にシンクロサイクロトロンシンクロトロンがある。
→関連項目人工放射性元素マクミランロートブラット

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世界大百科事典 第2版の解説

陽子などイオンの加速器。1930年E.O.ローレンスとM.S.リビングストンにより考案された。円形のビーム軌道面に垂直に一様静磁場をつくる電磁石,その中心におかれるイオン源,円を二分する形の加速間隙(かんげき)をもつ高周波電極(通称,ディー)などで構成される(図)。イオン源からディー電極で引き出された荷電粒子は磁場中で円運動をする。粒子の質量m,電荷q,磁束密度Bのとき,円運動の角周波数(角振動数)はωcqB/mである(MKSA単位系)。

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大辞林 第三版の解説

加速器の一種。原子核の人工破壊・放射性同位体の製造などに利用。向かい合わせた直流電磁石の極の間に、中空円板を二つに切断した形の電極を置いて高周波をかけ、イオンを磁場の作用で回転させながら電場で加速して高エネルギーの粒子線をつくり出す装置。1930年代頃から核反応実験のために用いられた。その後は高速度になるにつれて周波数を変化させるシンクロサイクロトロンや、周波数を変えずに粒子の軌道に沿って周期的に磁場の強さを変化させ、さらに高いエネルギーに加速できる AVF サイクロトロンが用いられている。 → シンクロサイクロトロン

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (cyclotron) 粒子加速装置の一つ。垂直方向に向いた磁場中にD字形の二個の中空電極を向かい合わせに置いたもので、その電極間に高周波電圧をかけ、二個の電極の中央にあるイオン源で粒子をつくり、これを加速して円運動を行なわせて、加速するもの。一九三一年、アメリカのローレンスとリビングストーンが発表。陽子・重陽子・α粒子などの軽粒子を加速するもので数十メガエレクトロンボルトのエネルギーが得られる。

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化学辞典 第2版の解説

1931年にカリフォルニア大学バークレー校のEarnest O. Lawrence,M.S. Livingstonが発表した,高周波電場と電磁石を利用する荷電粒子加速器.上下方向に磁場をかける直流電磁石と,水平方向にD型の電極2個を向かい合わせに組み合わせた円筒状構成になっている.2個のDの中心にあるイオン源で陽子などの荷電粒子を発生させ,高周波電場を印加して加速すると,磁場により荷電粒子ビームは曲げられる.Dの間げきを通過するたびに高周波の位相がかわるように同期をとると,荷電粒子はらせん状の軌道を描いて連続的に加速されて高エネルギーに到達する.Dを合わせた円が大きいほど到達エネルギーが高いので,直径の数字で,たとえば,カリフォルニア大学バークレーの60 in サイクロトロンのように表すことが多い.粒子の速度が光速に近づくと相対論的に質量が増加して高周波の位相から遅れてくるので,加速の限界が存在する.陽子ではおよそ25 MeV である.核科学の最先端の装置としては,その使命は終わったが,放射性核種の製造などに数多くのサイクロトロンが使われている.陽電子放射断層撮影法用の放射性核種製造にはサイクロトロンが使用されるので,この装置をもつ病院には必ず存在する.

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世界大百科事典内のサイクロトロンの言及

【核医学】より

…さらに27年にはRIが人体に対して応用され,ラジウムC(214Bi)を用いて一方の腕から反対の腕までの血流時間が体外から測定された。その後30年代後半からサイクロトロンによって製造されたナトリウム2424Naやリン3232Pなどの人工RIが供給されるようになり,治療,診断に利用された。50年代には原子炉で種々の人工RIが生産可能となり,核医学は急速に発展をした。…

【加速器】より

…コッククロフト=ウォルトンの装置ともいう)が実用化され,1932年にはこの装置で加速した陽子を用い,初めての人工的に加速した粒子による原子核破壊の実験に成功した(コッククロフト=ウォルトンの実験と呼ばれる)。45年ごろまでにはこのほか,バン・デ・グラーフ型加速器(1931),サイクロトロン(1930),線形加速器(1931ころ),ベータトロン(1940),シンクロトロン(1945)などの各種の加速器が考案され,これらが今日の加速器の基礎となったが,著しい進歩をもたらしたのは第2次世界大戦後急速に発達した電波工学,エレクトロニクス,真空技術,材料工学などである。加速器のエネルギーは6~7年に約10倍の割合で大きくなっており,シンクロサイクロトロンによってπ中間子が実験室で人工的に創生(1948)されて以来,大加速器を用いての新しい素粒子の発見が相次いでいる。…

【放射線治療】より

…このうちコバルト60は今日広く用いられている放射線源で,強力なγ線を照射することができる。また電子線などの発生装置としてはサイクロトロン,リニアック(線形加速器),ベータトロンなどが用いられるが,とくに近年,サイクロトロンを利用した粒子線治療の研究も進められている。リニアックとベータトロンは電子線(4~40MeV)のほかX線も照射でき,最近の普及は著しい。…

【ローレンス】より

…28年カリフォルニア大学の准教授,30年同教授に就任,36年以降は同大学放射線研究所長。1929年に読んだドイツのR.ウィーダレーエの論文にヒントを得て,均一磁場と高周波電場を組み合わせて使用する粒子加速器サイクロトロンを発明,30年秋の全米科学アカデミーの会合で報告した。その後30年代を通して,直径4インチのサイクロトロンから60インチのサイクロトロンまでの装置を開発し,原子核変換の研究や,人工的な放射性同位元素の製造,放射線の医療への応用研究などを行った。…

※「サイクロトロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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