日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
サンガー(Margaret Sanger)
さんがー
Margaret Sanger
(1883―1966)
家族計画運動(当初は産児制限運動)の提唱者。アメリカ、ニューヨーク州生まれ。小学校教員をしたのち看護学校を卒業、結婚、3児の母となる。ニューヨーク市のスラム街で保健看護師として働くなかで多産と貧苦の悪循環を痛感。避妊についての研究を行い、1914年、産児制限連盟を結成して機関紙『婦人の反逆』the Woman Rebel(のち『産児制限評論』the Birth Control Review)を発刊。1916年ニューヨーク市ブルックリンにアメリカで初めての産児調節相談所(マザーズ・クリニック)を開設。1921年には全米産児制限連盟を設立。当時アメリカでは避妊が禁止されていたので、しばしば逮捕されたが屈することなく、アメリカ国内のみならず海外を広く旅行して産児制限の指導、啓発にあたった。1922年(大正11)各国遊説の途次、来日。日本官憲の妨害にあった。なおその際、山本宣治(せんじ)にも影響を与えている。その後アメリカ家族計画連盟名誉会長就任(1942)、国際家族計画連盟の名誉会長(1952)。1955年(昭和30)に再度来日、日本家族計画連盟発足を祝った。その後も数度来日。『結婚の幸福』(1926)、『わたしの産児制限運動』(1931)、『自伝』(1938)などの著作がある。
[小倉襄二]