最新 心理学事典 「システム理論」の解説
システムりろん
システム理論
systems theory
システムには,機械などの物質システム,動物などの生体システム,概念,文字,数式などを要素とする抽象的システムなどさまざまな種類がある。心理学が対象とする人間はいうまでもなく一つのシステムである。このシステムは閉じておらず,ほかの人間と交流する開放的なシステムである。同様に組織や文化などもシステムである。知覚のようなより基本的な心理機能においても,ゲシュタルト心理学が指摘するように,全体性が重要な決定因である。心理学もこの統合的な見通しによって,他の学問分野のモデルを直接的に導入することや,理論の完成のために欠けている部分のヒントを得ることができる。
システムという考え方は,非常に古くからあったと考えられるが,とくに科学的にシステムを考える動きは,ホメオスタシスhomeostasisとよばれる現象の研究を一つの源とする。ホメオスタシスとは,環境の変化にもかかわらず,生物が体内の状態を一定に保つシステムである。この生体のシステムは,それが開放されていること,要素間に情報のフィードバックがあることが特徴である。情報のフィードバックは,工学的にはサイバネティックス(生物と機械における通信,制御,情報処理の問題を統一的に扱う総合科学)の発展と結びついている。サイバネティックスの成功は社会的にも大きなインパクトを与え,情報理論や通信工学の発展とも関連し,このシステム理論が生物学や工学だけではなく,現在では社会科学にも影響を与えている。
〔繁桝 算男〕
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