シンクロトロン

精選版 日本国語大辞典 「シンクロトロン」の意味・読み・例文・類語

シンクロトロン

〘名〙 (synchrotron) 円環状の粒子加速器で、円環に垂直に磁界を加え、円環内を走る荷電粒子がその速度に垂直に受ける力によって円環内を走るようにし、その回転周期に同期させて高周波電界で加速するようにしたもの。電子シンクロトロン陽子シンクロトロン、AGシンクロトロンなどがある。〔原子力(1950)〕

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デジタル大辞泉 「シンクロトロン」の意味・読み・例文・類語

シンクロトロン(synchrotron)

ベータトロンシンクロサイクロトロン原理を組み合わせた円環状の加速器磁界の強さに合わせて加速周波数も変化させ、一定の円軌道に沿って粒子を加速する。

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百科事典マイペディア 「シンクロトロン」の意味・わかりやすい解説

シンクロトロン

粒子の周期的加速器の一つ。サイクロトロンシンクロサイクロトロンでは,粒子に一様な磁場を作用させて円形軌道を描かせるため,粒子が加速され速度を増すにつれ軌道半径が大きくなるので,中心部から周辺まで一様な磁場を作らねばならず巨大な電磁石を必要とする。そこで粒子の速度が増すにつれて磁場も強くしていけば,粒子の軌道半径を一定に保つことができ,したがって一定の円軌道に沿って磁場を作るだけでよく,中心部の磁場は不要になる。これにより巨大な1個の電磁石を作る必要はなくなり,また直径数百mもの大型円軌道を設けることもできる。これがシンクロトロンの原理で,1945年に米国のE.マクミランソ連のV.ベクスレルが独立に発表。電子シンクロトロンでは,普通,初めベータトロンの方式で加速した後,サイクロトロンの方式に切り換え加速電極に高周波電圧を加えてさらに加速する。100億電子ボルト(10GeV)程度まで加速可能。陽子シンクロトロンでは,あらかじめ線形加速器で加速した陽子を円軌道に入れ磁場と加速用高周波電圧の両方を変化させながら加速する。最も巨大・強力な加速器で,米国のフェルミ研究所やスイスセルンCERN)にあるものは数百億電子ボルト(GeV)に達している。
→関連項目加速器(原子物理)放射光

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化学辞典 第2版 「シンクロトロン」の解説

シンクロトロン
シンクロトロン
synchrotron

荷電粒子(電子・イオン)の円形加速器の一種サイクロトロンでは,向き合った2個のD型の加速空洞に上下方向から磁場をかけて,荷電粒子加速とともに半径が大きくなる円形軌道を走らせるが,シンクロトロンでは,一定半径の円形(リング)に加速管と多数の偏向電磁石,高周波加速空洞を配置して,偏向電磁石により荷電粒子の軌道を曲げ,高周波加速空洞にクライストロンから高周波エネルギーを供給して加速する.高エネルギー大型施設では,電磁石,加速空洞ともに超伝導のものが用いられることが多い.電子シンクロトロンと重イオン・シンクロトロンに大別される.前者の場合,前段加速器の段階で光速近くまで加速されているので,主リング上の回転周波数はほとんどかわらないが,後者では,加速とともに高周波電場の変調が必要である.高エネルギーに達したときの軌道放射によるエネルギー損失は,軌道曲率半径の1乗および粒子静止質量の4乗に反比例するので,電子を加速する場合は莫大なエネルギーを補給するとともに,曲率半径を大きくする必要がある.わが国の高エネルギー加速器研究機構の電子シンクロトロンTRISTAN(32 GeV)直径960 m(1995年実験終了),欧州合同原子核研究機関CERNのLEP-Ⅱ(104 GeV)直径8500 m(2000年実験終了)のように大型であった.陽子シンクロトロンではアメリカのフェルミ研究所のTEVATRON(1 TeV)直径2000 m,2008年に運転を開始したCERNのLHC(7 TeV)直径8500 m がもっとも高エネルギーの施設である.重イオンシンクロトロンとしては,裸の金の原子核まで加速できるブルックヘブン国立研究所のRHIC(100 GeV/核子)直径1200 m が知られている.これらの大型施設は,すべて衝突型であって素粒子研究が目的で,新素粒子発見のために活動中である.東海・大強度陽子計画J-PARCは50 GeV 陽子シンクロトロンである.医療用にも陽子・重イオンシンクロトロンが用いられている.[別用語参照]医療用加速器

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シンクロトロン」の意味・わかりやすい解説

シンクロトロン
synchrotron

加速器の1種で,一定方向の磁場内におかれたドーナツ型真空容器内で円運動する荷電粒子に高周波電場を加え,繰返し加速する装置。加速する粒子の種類によって陽子シンクロトロンと電子シンクロトロンがある。磁場内の荷電粒子の円運動の半径は粒子の運動量に比例し,磁束密度に反比例するので,磁場の強さを粒子の運動量が増加するに従って変化させ,粒子の円運動の半径を一定に保つ。円運動の周期は粒子の質量に比例し,磁束密度に反比例して変化するので,高周波電場の周期もこれと同期するよう変調する。ただし電子シンクロトロンでは,数 MeV以上で電子の運動量と質量とが比例するので,周波数変調は必要としない。この加速器で 10億 eV以上の高いエネルギーが得られる。 100億 eV以上の加速器はもっぱらこの型である。

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世界大百科事典 第2版 「シンクロトロン」の意味・わかりやすい解説

シンクロトロン【synchrotron】

リング状に並べた電磁石(リング磁石)で荷電粒子を円形軌道上に拘束し,軌道の途中に置いた高周波空洞で加速する装置(図)。原理は,1945年にソ連のV.I.ベクスレルとアメリカのE.M.マクミランによってそれぞれ独立に考案された。加速する粒子によって電子シンクロトロン,陽子シンクロトロンなどと呼ばれる。加速を受けてもビーム軌道はつねに同じ場所を通るよう,磁場の強さと高周波の周波数を変えている。高周波加速では位相安定の原理が働き,理想値から多少ずれたエネルギーや加速位相の粒子も高周波との同期性を失わないので,これにより,磁場と加速周波数を適切に変化させれば,加速が自動的に進む(シンクロトロン加速の原理)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シンクロトロン」の意味・わかりやすい解説

シンクロトロン
しんくろとろん
synchrotron

加速器の一種。

[編集部]

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世界大百科事典内のシンクロトロンの言及

【加速器】より

…コッククロフト=ウォルトンの装置ともいう)が実用化され,1932年にはこの装置で加速した陽子を用い,初めての人工的に加速した粒子による原子核破壊の実験に成功した(コッククロフト=ウォルトンの実験と呼ばれる)。45年ごろまでにはこのほか,バン・デ・グラーフ型加速器(1931),サイクロトロン(1930),線形加速器(1931ころ),ベータトロン(1940),シンクロトロン(1945)などの各種の加速器が考案され,これらが今日の加速器の基礎となったが,著しい進歩をもたらしたのは第2次世界大戦後急速に発達した電波工学,エレクトロニクス,真空技術,材料工学などである。加速器のエネルギーは6~7年に約10倍の割合で大きくなっており,シンクロサイクロトロンによってπ中間子が実験室で人工的に創生(1948)されて以来,大加速器を用いての新しい素粒子の発見が相次いでいる。…

【ストレージリング】より

…円形軌道をつくる磁場の強さを一定に保ち,高エネルギー粒子ビームを回しながらリング状の真空ダクトの中に貯蔵する形式のシンクロトロン。貯蔵時間は数時間から,長いものは数日にも及ぶ。…

※「シンクロトロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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