ジャコメッティ

デジタル大辞泉 「ジャコメッティ」の意味・読み・例文・類語

ジャコメッティ(Alberto Giacometti)

[1901~1966]スイス彫刻家画家シュールレアリスム運動に参加針金のように細長く単純な人体構成により、人間実存的な不安と孤独を表現した。

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精選版 日本国語大辞典 「ジャコメッティ」の意味・読み・例文・類語

ジャコメッティ

  1. ( Alberto Giacometti アルベルト━ ) スイス生まれの彫刻家。ジュネーブ美術学校に学び、のちパリに住んで、キュービズムの影響を受け、シュールレアリスムの運動に加わった。特に第二次世界大戦後、針金のようにひょろ長くて周囲にダイナミックな空間をはらむ、単純な人体構成を生み出して注目された。代表作「指さす男」「男の顔」など。(一九〇一‐六六

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百科事典マイペディア 「ジャコメッティ」の意味・わかりやすい解説

ジャコメッティ

スイスの彫刻家。スタンパ生れ。父は風景画家。ジュネーブの美術学校で学び,パリに出てブールデルのアトリエに入る。のちシュルレアリスムの運動に参加,《午前4時の宮殿》(1933年)などの作品のほか,エロティックなオブジェを制作。その後運動から離脱し,第2次大戦後は針金を思わせる細長い人間像を多く制作し,人間の実存を凝縮させたような独自の様式を築いた。また短かい線の集積によって立体感や陰影を表した油彩素描も手がけた。著書に《エクリ》がある。哲学者矢内原(やないはら)伊作との親交は有名。
→関連項目ドアノーバルチュスロサンゼルス現代美術館

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改訂新版 世界大百科事典 「ジャコメッティ」の意味・わかりやすい解説

ジャコメッティ
Alberto Giacometti
生没年:1901-66

スイスの彫刻家。制作活動の大半はパリでなされた。スタンパ生れ。1922年パリへ行き,3年間ブールデルに彫刻を学んだ。しかし,人体の量感の表現に自信をもつことができず,人間の存在感を表現する方向へ関心を向ける。プリミティブな彫刻への興味を経て,30年代の初めにはシュルレアリスムの運動に加わる。この頃の代表作に《午前4時の宮殿》(1933)がある。しかし,オブジェへの関心をやがて失い,運動から離脱して彫刻の探求に没入し,第2次大戦後ひょろ長い人体像に着手。以後没するまでこの独自なスタイルを造りつづけた。肉をそぎおとされたかのようなこれらの人間像には,人間は単独で自足する存在ではなく,他者との関連抜きには存在しえないという思想,他者に見られる人間という実存主義的視点が示されている。P.セザンヌと似た探求型の芸術家といえよう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャコメッティ」の意味・わかりやすい解説

ジャコメッティ
じゃこめってぃ
Alberto Giacometti
(1901―1966)

スイスの彫刻家。スイスのシュタンパに生まれる。ジュネーブの美術工芸学校に学ぶ。イタリアに遊学後、1922年パリに住み、ブールデルの工房で学ぶ。25年ごろからキュビスム風の構成的な彫刻を発表。30年シュルレアリスムの運動に参加、『午前四時の宮殿』(1933・ニューヨーク近代美術館)を制作。しかしこれらの試みからふたたび自然に基づく探求、とくに人体表現へと帰り、35~45年の間、第二次世界大戦前から戦後にかけての苦悩と不安をまったく独自な人体表現に託した。凝縮されほとんど針金のようになった人体、荒々しくとげとげしい肌、ときには数センチメートルにまで小さくなった大きさ。それらはとくに戦後世界の状況のなかで、人間の実存の表現として高く評価された。やがて人体はしだいに高くなるが、いっそう細くなる。晩年は弟ディエゴと妻アネットの顔に、人類の苦悩、そしてまた表現の苦悩そのものを託した。62年ベネチア・ビエンナーレで大賞を受賞。65年ロンドンおよびニューヨークで大回顧展が開催された。スイスの故郷に近い町クールで没。

[中山公男]

『矢内原伊作著『ジャコメッティとともに』(1969・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャコメッティ」の意味・わかりやすい解説

ジャコメッティ
Giacometti, Alberto

[生]1901.10.10. グリゾン,スタンバ
[没]1966.1.11. クール
スイスの彫刻家,画家。印象派の画家ジョバンニ・ジャコメッティの子。 1922年パリに出,3年間 E.ブールデルに学んだが,黒人彫刻に関心をいだき,25年頃からキュビスムの技法による人物を多く制作。 1930年代にはシュルレアリスム運動に加わり,針金を用いて鳥籠のような空間構成を主題とする作品『横たわる女』 (1929) ,『シュルレアリスト・ケージ』 (30) ,『午前4時の宮殿』 (33,ニューヨーク近代美術館) などを制作。 35年頃からシュルレアリスム運動を離れ,第2次世界大戦後はやせ細った,長く引伸ばされた人物,人物群像によって独自の様式を確立した。『指さす男』 (47,テート・ギャラリー) ,『広場』 (48,ニューヨーク近代美術館) などを発表。彼の油絵は灰色を基調にしたモノクロームに近いもので,主題は広い室内に正面を向いた人物と,アトリエ内の静物とにほぼ限定されている。

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世界大百科事典(旧版)内のジャコメッティの言及

【オブジェ】より

…ロシア,オランダの構成主義の,幾何学的構成物も見のがせない。シュルレアリスムのオブジェの導火線は,ジャコメッティが極度に不安定な,しばしば動く形態で,性的な欲望や不安を象徴したことにあり,それに触発されたダリは物体の日常的効用を最低限に制限して,詩の喚喩や隠喩のように無意識を細密に具象化する,〈象徴機能のオブジェ〉を提唱した。このような物体観は,迫真的に描かれた物体が現実にはありえない関係に配置されるダリ自身の絵画を含めて,映像のポエジーと神秘を著しく増幅させた。…

※「ジャコメッティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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