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ストレンジネス strangeness

翻訳|strangeness

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ストレンジネス
strangeness

奇妙さともいう。クォーク内部量子数 (香りの量子数) の一つで,ストレンジクォーク (s) はストレンジネス S=-1 ,反ストレンジクォーク () は S=+1 ,その他のクォークは S=0 をもつ。チャームクォークやボトムクォークを考えない場合には中野=西島=ゲル=マンの規則 Q/eI3B/2+S/2 が成り立つ。ただし QBI3 はそれぞれ電荷,バリオン数,アイソスピンの第三成分であり,e は電気素量である。クォークの結合系であるハドロンでは,核子や π 中間子は S=0 ,K中間子は S=1 ,Σ 粒子や Λ 粒子は S=-1 ,Ξ 粒子は S=-2 である。ストレンジネスは強い相互作用電磁相互作用で保存され,弱い相互作用でのみその保存則が破られる。K 中間子と Λ 粒子は,強い相互作用 π+N→K+Λ によって高い頻度で生成されるが,これらの崩壊は K→π+π ,Λ→N+π のように,ストレンジネスの保存則を破るので弱い相互作用にかぎられる。その結果,これらの粒子は長い寿命 (10-8~10-10秒) をもつ。YBS で定義されるハイパーチャージはバリオンと中間子を対称的に扱ううえで便利な量子数である。

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デジタル大辞泉の解説

ストレンジネス(strangeness)

《奇妙なことの意》素粒子間の相互作用を特徴づける量子数の一。強い相互作用や電磁相互作用がある場合に保存される。

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百科事典マイペディアの解説

ストレンジネス

奇妙さとも。素粒子における量子数の一つ。K中間子素粒子)やハイペロンなどのハドロンを分類するため,1953年西島和彦,中野董夫,M.ゲル・マンが導入した。π中間子・核子はストレンジネス0,K中間子は+1,シグマ粒子ラムダ粒子は−1,グザイ粒子−2,オメガ粒子−3(各反粒子では符号が逆)。
→関連項目反粒子

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世界大百科事典 第2版の解説

ストレンジネス【strangeness】

奇妙さ〉ともいう。素粒子における量子数の一つ。1947年イギリスのロチスターとバトラーは,磁場中のウィルソン霧箱中においてV字形の飛跡を観測,これは中性粒子(Λ粒子)が二つの荷電粒子に崩壊したものと結論された。その後このような粒子としてK中間子,シグマ粒子(Σ)などの存在が明らかとなったが,これらの粒子がきわめて短時間につくられるのに,いったんできてしまうと平均寿命は予期されるものより大幅に長いことの説明はできず,このため,これらの新粒子は奇妙な粒子strange particleと総称された。

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大辞林 第三版の解説

ストレンジネス【strangeness】

〘物〙 素粒子のハドロンがもつ量子数の一。比較的早くから知られている核子・パイ( π )中間子のストレンジネスはゼロであるが、例えば、ラムダ( Λ )粒子・シグマ( Σ )粒子はマイナス一、グザイ( Ξ )粒子はマイナス二である。根源的にはクオークの「香り」の量子数の一。 → クオーク

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ストレンジネス
すとれんじねす
strangeness

素粒子を特徴づける量子数の一つで、奇妙さともいう。
 強い相互作用をもつ素粒子の仲間をハドロンと総称するが、これらの粒子、たとえば陽子と中性子(核子と総称)、あるいはπ(パイ)中間子(+e、0、-eの電荷をもつ)などはすべて電荷の値が異なるだけで、質量その他の性質が非常に似た仲間をつくっている。この事実を理解するために、抽象的空間(アイソスピン空間)を考えて、ハドロンの粒子はそこでの角運動量(アイソスピン)Iをもつものとする。量子力学ではこのIの値は、整数か半整数であり、またその成分、たとえば第3軸成分I3は、2I+1個のとびとびの値をもつ。核子のIは1/2、I3は陽子に対して+1/2、中性子に対して-1/2とする。π中間子に対してはI=1,I3=1,0,-1と置く。次に重粒子(バリオン)数Bを核子に対して1、π中間子に対して0とすると、粒子の電荷Qは、eを単位にしてQI3+(B/2)と表せる。つまりハドロンの粒子はアイソスピン空間で、それぞれ一定の大きさの角運動量Iをもち、その角運動量の向きが第3軸となす傾きによっていろいろな電荷の値をとる、とみなすのである。
 高エネルギー実験の進展とともに新しい一連の素粒子が発見されるにつれ、ハドロンには前記のアイソスピンやバリオン数のほかに、新しく整数値をとる量子数S(ストレンジネス)を付与しなければならないことが判明した。核子やπ中間子ではS=0であり、S≠0の粒子をストレンジ粒子とよぶ。こうしてハドロン全体に対して、粒子の電荷はQI3+(BS)/2と表すことができ、この関係を中野‐西島‐ゲルマン則という。またBSYと書いて、ハイパーチャージといい、これら定義式に現れた量子数は、強い相互作用や電磁相互作用によるハドロンの反応ですべて保存される。
 クォーク模型では、sクォークが-1のストレンジネスをもつので、sクォークを含むバリオンいわゆるハイペロンの仲間のΛ(ラムダ)粒子、Σ(シグマ)粒子はsクォーク1個をもつのでSが-1、Ξ(クシー)粒子は、sクォーク2個を含みSが-2、Ω(オメガ)粒子は3個のsクォークからなるのでSは-3となる。2008年に茨城県の東海村に建設された大強度陽子加速器施設(J-PARC:Japan Proton Accelerator Research Complex)では、ハイペロンを含む原子核、いわゆるハイパー核の研究が進められている。[小川修三・植松恒夫]

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世界大百科事典内のストレンジネスの言及

【素粒子】より

…二つのV粒子が同時に見られる確率はそれらが独立ならば極端に小さいはずだから,ひんぱんに起こるということは,一つの反応でそれらが同時につくられたとみるべきである。これらを説明するために,53年,西島和彦と中野董夫,M.ゲル・マンはそれぞれ独立に,すべてのハドロンは電荷とバリオン数のほかに新しい量子数としてストレンジネス(奇妙さ)strangeness(ゲル・マンの命名)をもち,このストレンジネスの和が強い相互作用や電磁相互作用では保存されるという考え(中野=西島=ゲル・マンの法則)を提唱した。ここでストレンジネスSは,粒子の電荷をQ,アイソスピンの第3成分をI3,バリオン数をB,電気素量をeとして,Qe(I3B/2+S/2)で定義される。…

【素粒子】より

…二つのV粒子が同時に見られる確率はそれらが独立ならば極端に小さいはずだから,ひんぱんに起こるということは,一つの反応でそれらが同時につくられたとみるべきである。これらを説明するために,53年,西島和彦と中野董夫,M.ゲル・マンはそれぞれ独立に,すべてのハドロンは電荷とバリオン数のほかに新しい量子数としてストレンジネス(奇妙さ)strangeness(ゲル・マンの命名)をもち,このストレンジネスの和が強い相互作用や電磁相互作用では保存されるという考え(中野=西島=ゲル・マンの法則)を提唱した。ここでストレンジネスSは,粒子の電荷をQ,アイソスピンの第3成分をI3,バリオン数をB,電気素量をeとして,Qe(I3B/2+S/2)で定義される。…

※「ストレンジネス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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