翻訳|strangeness
〈奇妙さ〉ともいう。素粒子における量子数の一つ。1947年イギリスのロチスターとバトラーは,磁場中のウィルソン霧箱中においてV字形の飛跡を観測,これは中性粒子(Λ粒子)が二つの荷電粒子に崩壊したものと結論された。その後このような粒子としてK中間子,シグマ粒子(Σ)などの存在が明らかとなったが,これらの粒子がきわめて短時間につくられるのに,いったんできてしまうと平均寿命は予期されるものより大幅に長いことの説明はできず,このため,これらの新粒子は奇妙な粒子strange particleと総称された。53年西島和彦およびM.ゲル・マンらは,素粒子はアイソスピンとバリオン数のほかにもう一つの量子数を帯びていて,その数の和が強い相互作用や電磁相互作用では保存するという理論を提唱,ゲル・マンはこの新しい量子数をストレンジネスと呼んだ。ストレンジネスが保存される反応が一度に起こるのが強い相互作用で,保存されない反応は弱い相互作用で長時間かかって崩壊すると考えると,つくられるときはきわめて短い間につくられるのに,いったんできてしまうと平均寿命が長いという奇妙な性質をうまく説明できる。例えば,K中間子のストレンジネスSはS=+1,核子,π中間子ではS=0であり,π中間子と核子との相互作用は強い相互作用なので,これによってK中間子がつくられるとき,K中間子とともにS=-1の粒子(Λ,Σ)が必ず生ずる。一方,Λ,Σが核子とπ中間子に,またK中間子が二つのπ中間子に崩壊する過程ではストレンジネスは保存されない。すなわち弱い相互作用であり,これらの粒子の寿命は長い。
執筆者:猪木 慶治
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…二つのV粒子が同時に見られる確率はそれらが独立ならば極端に小さいはずだから,ひんぱんに起こるということは,一つの反応でそれらが同時につくられたとみるべきである。これらを説明するために,53年,西島和彦と中野董夫,M.ゲル・マンはそれぞれ独立に,すべてのハドロンは電荷とバリオン数のほかに新しい量子数としてストレンジネス(奇妙さ)strangeness(ゲル・マンの命名)をもち,このストレンジネスの和が強い相互作用や電磁相互作用では保存されるという考え(中野=西島=ゲル・マンの法則)を提唱した。ここでストレンジネスSは,粒子の電荷をQ,アイソスピンの第3成分をI3,バリオン数をB,電気素量をeとして,Q=e(I3+B/2+S/2)で定義される。…
…二つのV粒子が同時に見られる確率はそれらが独立ならば極端に小さいはずだから,ひんぱんに起こるということは,一つの反応でそれらが同時につくられたとみるべきである。これらを説明するために,53年,西島和彦と中野董夫,M.ゲル・マンはそれぞれ独立に,すべてのハドロンは電荷とバリオン数のほかに新しい量子数としてストレンジネス(奇妙さ)strangeness(ゲル・マンの命名)をもち,このストレンジネスの和が強い相互作用や電磁相互作用では保存されるという考え(中野=西島=ゲル・マンの法則)を提唱した。ここでストレンジネスSは,粒子の電荷をQ,アイソスピンの第3成分をI3,バリオン数をB,電気素量をeとして,Q=e(I3+B/2+S/2)で定義される。…
※「ストレンジネス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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