日本大百科全書(ニッポニカ) 「西島和彦」の意味・わかりやすい解説
西島和彦
にしじまかずひこ
(1926―2009)
理論物理学者。茨城県土浦市の生まれ。1948年(昭和23)東京大学理学部物理学科卒業。大阪市立大学の助手、講師を経て1959年同大学教授。同年アメリカに渡り、イリノイ大学物理学教授。1966年帰国後、東京大学理学部教授として理論物理学を講じ(1966~1985)、理学部長も務めた(1979~1982)。1986~1990年京都大学基礎物理学研究所長。その後中央大学理工学部教授(1990~1997)。主要な業績は、場の理論における多体問題の研究(1953~1955)、ニュートリノのゼロ質量にかかわる問題(1957)、BRS変換(Becchi‐Rouet‐Stora transformation)と色粒子の閉じ込めの理論(1982)など多彩である。なかでも1953年のV字型粒子の荷電独立性に関する研究は、奇妙さ(ストレンジネス)概念により保存則を論じ、いわゆる「西島‐ゲルマンの規則」をたてたものとして有名である。1955年仁科(にしな)記念賞、1964年学士院賞、1969年東レ科学技術賞を受賞した。1993年(平成5)文化功労者、2003年文化勲章受章。その他、ヘルシンキ大学名誉博士号、ロシア科学アカデミー会員等、国外での栄誉も受けている。東京大学、京都大学名誉教授。著書に『場の理論』(1987)、『素粒子の統一理論に向かって』(1995)などがある。
[藤村 淳]
『西島和彦著『相対論的量子力学』(1973・培風館)』▽『西島和彦著『物理学の廻廊 力学系と自然法則』(1978・産業図書)』▽『『場の理論』(1987・紀伊國屋書店)』▽『『素粒子の統一理論に向かって』(1995・岩波書店)』▽『西島和彦著『科学と技術の間』(2000・国際高等研究所)』